12/27 回り道できない通学路

「これは小さい頃の話なんですが...」


 そう語りだしたのはOさん□歳。このOさんには、いろいろ不可解な面白い実話会談があるそうなんです。Oさんの通っていた小学校は、自宅から随分と遠い場所にあったそうで、通うのが大変だったそうです。「子供の足ですからね、約1時間はかかったんじゃないかな...速くて40分位かな...?」って笑いながら仰っているのが印象的でした。それでも、1時間歩くのは大変でしょう。だって六年間で週5回一日往復ですからね。僕なんかは、都会だから5分でした。僕?僕は聞き手のライター▽です。


「はい。だからその帰る時間で何をしていたか?って思いだしたんですけど...私の一番仲良くしていた友達は、学校から出た早い段階で別方向に分かれてしまうので、一緒には帰れないんです。よくあるじゃないですか、暇だから遊びながら帰ろうとか。この石を家まで蹴って帰れるかどうかという「謎のサッカー大会」影だけを踏んで陽に当たったら負けという「即死ゲーム」この脇道は近道だから、いつか絶対にバレないでこの道を通って帰りたいという「いつか絶対の通学路」とかね。だからいつも、一人で妄想しながら遊んで帰っていたんです」


 僕は質問しました。「それで、どこが不可解なんですか?」


 Oさんは少し考えこんだ様子で、ちょっと躊躇いがあった風に僕には見えた。その「いつか絶対の通学路」を実行した日の事なんですけど...Oさんはそれを実行に移していたんですね。僕にはそれがどういったことなのか、その時点ではまったく理解できていなかった。


「わかりませんか?わからないですよね...週5日の通学5分のあなたに話しても。いろんなことがその小一時間で起こるんです。この話はまだいいほうで、他の話はあまり話したくないんです。本当は。でも、話さないと一生後悔するんじゃないですか...?ってあなたに言われて、今、思い切って話してるんです。真面目に聞いていますか?」


 Oさんは途中、なぜか言葉の語調がはやくなっていき、僕は内心このOさんが、怒りだすんじゃないかって、ヒヤヒヤしてしまった。僕は平謝りして、話の続きを聞きました。「続きを是非お願いしたいです。報酬ははずみますので」


 そう言って、帰ろうとしていたOさんを、僕は引き留めた。だって純粋に話を聞きたくなったから。最初は半信半疑だった。だって、この喫茶店に着き、「ここの支払いは会社の経費で落ちるからなんでも注文してくださいね」と話したら、あれやこれやら注文しだして...身なりからしてお金に困っていそうだったし。ただの冷やかしか、お金目当てだって思っても仕方ないと思う。Oさんはそれを聞き、「わかりました。でも最後まで聞いてくださいね」という圧力をかけてきた。僕はライター人生を歩んでいるので、こういうタイプにはいろいろ遭遇しているし、対処法もいくつか、心得ているはずだった。

 

 「いつか絶対の通学路」を実行した日なんですが、上級生にそれを目撃されていました。なんて言われたと思いますか?


『先生に、違う通学路で帰ってたってバラすからな』って。


私は怖くなっていつもの通学路で帰りました。でも、心の中では思っていたんです。その上級生は、違う通学路で帰っているのを見たことがある。そもそも、その違う通学路は、近道なわけなんですが、交通量が激しく歩行者には危険な道、そう判断された路なんですね。だから私は六年間も遠回りしていたわけです」


 僕は、正直これを聞いた時「早く仕事に帰りたい」と素直に思いました。・・・こんな悩み相談の様な相手をして。僕は仕事なのに。不可解な面白い実話会談があるっていうから、遠出までして来たんです。それが実話会談―僕のポリシー『直接現場へ赴きの直接本人から話を聞く』だからです。こうなったら、時間もお金ももったいないと思い、今度は僕のほうが席を立とうとした時、Oさんが、突然何かのスイッチが入ってしまったみたいで、「待ってください!まだおわってないんです」って僕の腕にしがみついてきた。正直、恐かった。


 「この出来事が中学生の頃に、全てふせん回収されるんです」


 Oさんの突然のセリフに、聞いた僕は???になりました。この人嘘ついてる、頭おかしい人なんだって。だからこの時、もう報酬の件はナシにして、この喫茶店代だけでおさらばしようって思ってました。で、Oさんは食い気味に話し始めたんです。


「先ほどの話は一旦忘れてください。それで私は中学生になり、部活の時の出来事なんですけど...。私はその時、中三で後輩がいる立場にありました。とある発表前に顧問の先生からお言葉があったのですが、部活メンバーはおしゃべりに夢中で、誰も先生の話を聞いていないのか、静かにする気配がなかった。屋外ということも関係していると思います。だから、先生の声が通らないのかなって私はとっさに『先生が静かにしてって言ってるよ』って叫びました。その場は静かになったのですが、その後間髪いれずに先生か、リーダーか、そこはどちらが言ったのか忘れたのですが訂正が入りました。『今のは、先生はいらない』とかそんなニュアンスで。ただ『静かにして』って言えばいいんだって。それから私は笑いものですよ。『先生が静かにしてって言ってるよーって先生という言葉はいらないからね笑』『先生ってつけるのは、おかしい』とか『先生ってつけるのは、自分の意見で言ってないから云々』などのことを。お前は、先生をつけないと意見も言えない子供だって言いたいんでしょうね。つまり、『先生って言葉を味方にしなきゃ、静かにしろって命令口調で発言できないんだろ』って。でもどうでしょうか?その場は静かにはなったんです。しかも私の立場で『静かにして』って言って、静かになるようなメンバーなんでしょうか?っていう感じでしたが。それとも、私は発言せずにただ沈黙して見て見ぬふりをしていればよかったでしょうかね?それはつまるところ、私はおしゃべりに夢中な仲間入りをしろってことなんでしょうか?わかりませんよ。正解なんて」


 僕は、またもや???となり、この記事をまとめるのはちょっと大変だろうなという予感がした。これはホラーなのか、それともただただ愚痴を聞かされているだけなんじゃないかって。、Oさんの話はまだ続いた。


 「これからなんです。小一時間ってまだありますからね。まずですね、交通量が少ないというのが、どういう事を意味するのかわかってますか?田舎の電灯もない道なんですよ。出ますよね。露出狂―――。出没するんです。それにもタイプがあるんですよ・・・」


 僕はちょっと興味が出てきた。なんせ僕はそういう経験が全くない。それはホラーになるのか、ノンフィクションという線でいくのもありだろう。と、俄然興味が湧いた。話を聞いておきたいと思った。だが、ここで不意に店内放送が流れた。Oさんも僕も、その放送をなぜか聞き入る体制をとってしまったのだ。



♬ピンポンパンポォ~

本日もご利用、ご来店誠にありがとうございます。

当店のイチオシ、「ボンボンドロップシール」が再入荷いたしました。

お求めいただけるのは、今この放送をお聞き頂いた1時間限りとさせていただきます。先着となりますので、お早めにご来店ください。

また、現段階で8割方のプロットは埋まっています。

残りの2割をどうするか、今後の機会に相互期待!



放送はおわり、Oさんとの話を再開させた。

僕は、話の続き「露出狂のタイプ」について聞いたのだ。


※ココのこちらの※は、ノンフィクションです。HSP気質や繊細な神経をお持ちの方は、不快になる恐れがあります。又、特別な診断を受けていなくても、その後PTSDなどの発症を起こすことがあり得ます。私自身がその一例です。ですので、無理そうなら読むのを止めて下さい。この実話会談は、露出する狂に注意喚起するものであり、露出という何か不快なものを推奨するものではありません。不快な者や、不快な物は、人によって異なるため不快か自分でわかっている必要がございます。何卒ご理解ください。診断症状が出た場合は、速やかに医師、カウンセラーへご相談ください。無理そうでしたら、無料動画などで検索語、確認してみてください。もし万が一、わからないのでしたら、そのような気質、繊細さはないのかもしれないと、疑ってみる必要があります。私からは以上です。※



「タイプってどんなタイプがあるんですか?」―――はい。まず、普通の露出狂の1)下半身2)全裸の2パターンしか私は遭遇してません。でも探せばいろいろあるんじゃないですか。登場パターンも自転車、車の2パターンです。素早く逃げられるからでしょう。これは、私の小さい頃の話ですから。それからどんどん時代はマニアック路線にはいったと思われるので。

「ほうほうそれで」―――はい。何も自分自身の身体を露出するというのが露出狂ではなかったんです。

「というと、何を露出するんですか?」―――えっと。私にもわからないんです。というのも、その時に見せられたものを認識できてないので、当時の自分は???だったわけですから。

「僕も今???の状態なんですが...同じことでしょうかね」―――違いますたぶん。私は、帰り道を普通に帰っていたんです。私は妄想しながら帰っていたわけですけど、怪しい人影が隣に忍び寄っていることに気づけませんでした。その人影が耳元でささやくんです。


 僕は目をパチパチさせた。


「これ、どう思う?」って。私は何かを見せられたんですが、そこはハッキリよく覚えていません。わからないものを見せられてもわからなくないですか?


 僕はもう「はいそうですね」とは、気軽に頷ける雰囲気でないことはわかっていた。ここで軽く頷いてしまうと、何か話がこじれてしまいそうだったから。


「見せられてもわからないっていうのは、わからないものを見せられたってことでしょうか?」―――そうなんですよね。たぶんね。私が今思うに、その人影は結局どういう反応であればのだろうかってことが、また考えてしまう種になりました。あなたはどう思いますか?


「ン~。どうって。わからないものを見せられても、何も反応できませんよ普通」

―――そうでしょうね。だから私も無反応でした。無反応でそのまま何事もなかったように家に帰りました。振り返ると後をつけられているんじゃないかって、思ってしまい、そこは子供ながらに振り返らずに家に帰りました。しかもこの「これ、どう思う?」パターンに、私は複数遭遇しているのです。そのの部分が、写真や、文字だったバージョンもありました。新聞の切り抜き文字のようなものとか。車から乗りだして見せられるとか・・・。ただ無言で見せられるパターンもあったんですよ...。本当に恐怖でしたよ。


「親御さんには話はしたのですか?不審者情報とか周囲でなにか噂のようなものはあったんでしょうか?」―――親には一切話してません。話して何かどうなる親ではなかったので。話しても、どうにもならないと思っていた子供でしたので。でも普通の力のない子供でしたから、このように言語化できたのは、大人になってからです。当時はただただ???か漠然とした恐怖しかありませんでした。これが、今あなたの思っている???ではないでしょうか?違っていたらごめんなさい。上手く説明できなくて。不審者情報っていうのも、当時はSNSがない時代ですからね。子供にはわかりません」


 Oさんはあらかた話がおわると、ふーと息を吐いて少し安堵の表情を浮かべた。


「本日は話を聞かせて頂き、誠にありがとうございます。会計はこちらで払いますので大丈夫ですよ」―――いえ、こちらこそわざわざ、遠いところまでお出でくださり申し訳なかったです。本当に、ありがとうございました。すみません、今仕事で多忙につきこんな格好で。恥ずかしい思いをさせてしまい、申し訳ありません。電話かZOOMでもよかったんですが、リアルって大変なんですね。お仕事頑張ってください。記事拝見しますね。応援しています。


  その喫茶店を出たあと、最寄りの駅まで送った帰り際のOさんの放った言葉が、僕は忘れられずにいる。


「あそこの喫茶店は、見た目で判断するんですね」


僕にはなんのことだか、さっぱりわからなかった。記事の編集や稿料の件で2.3回メールをしたけどそれ以降、Oさんとは連絡を取り合っていない。



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 私はOです。こんにちは。こんばんは。▽さんに記事にしてもらったんですけど、しっかり記事にしてもらって有難いです。私は、このもやもやした気持ちを長い期間ずっと抱えており、文章化してもらい注意喚起のため情報を公開していただけた事に感謝がいっぱいです。また、「カクヨム」様の無料プラットフォームで、このような事を載せてもよいのだろうか・・・という不安は堪えずあるのですが、愚痴を吐けずにいたら、いつの間にか押し殺した人生を生きてきてしまい、何もかもが荒れていました。これは愚痴なんでしょうか?友達に愚痴を話してしまい、そのあと何かの記事で『愚痴をはけ口にするのは友達じゃない』って鵜呑みにしてしまい、または、とある記事をみて『愚痴をはける友達はラクな友達』ってみて、『ただ話しやすい』のか『ただ愚痴をいう相手を友達というのか』『気軽な相手って友達なの』『愚痴を言い合える友達は親友になるのか』という深みにはまり、自分がよくわからなくなったのです。幼い頃に帰りに妄想したあの日々の中に、「学校の前が家だった」という、妄想をしたことがありました。既に家バレしてますよね...おそらくですが「お前ん家、近くていいよな―寝坊してもいいんだろ?忘れ物してもすぐ取りに帰れるし・・・ほぼ学校が家じゃん」とか言っちゃう人いるんでしょうね。実際に似たセリフを言われている人がいたんです....。そのようなことを考えて、私もう、どちらがよいのか、わからなくなってしまったんですね。

あ、すいません。

 皆さんが聞きたいのは、あの日の話ですよね?実は、あの喫茶店で出てきた、私のコップの水の中に、ゴミの様なものが浮かんでいるのを見てしまったんです。あれは最初から入っていました。「嫌がらせなのかな」って一瞬思ってしまったんですけど、それは被害妄想ですよね?何かの拍子で入ったのかもしれませんね。

 はい、だから家族には「人を疑うな」って言われてるんです。疑ったその時点でたぶん、その場にいられなくなるんでしょう。信頼関係って難しいですよ。相互信頼関係って今はプライバシーもありますし、重要な立場や役職などについている方々は責任がありますので、個人情報などを守るためには、対価を払って受取るという金銭のお約束が一番わかりやすいのですね。それが安心となるのだと思います。責任と覚悟と安心と信頼のバランスが大切なんですね。

 たぶん、ちゃんと言える人は言うんですよ。「水を換えてください」って。私は言えないので、黙って去ってしまうタイプです。言えないっていうか、お皿を下げた時点で、ご飯がどのくらい残っていたかとか関係ありますかね...。でも、本当に怖い恐怖体験は、ここにも書けないようなことなので、それは墓場まで持っていくんでしょう。▽さんご協力ありがとうございました。聞いてくださった皆様もどうもありがとうございます。

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