一週間メランコリー ★8

★8 千羽鶴はよく燃える


 「意識がないだけだ。生きているんだ。泣くことはないよ」


 そんなことしか言えない。ずっと机に突っ伏して。あちこちからぐすんぐすんと泣いている声が聞こえうるさい黙れなんだ!あぁ!?黙れと言っているだろう!!

 ……さっきメグミに声をかけたわけだが、これはどうも私の言葉ではない気がする。では一体誰の言葉だろう。誰が、メグミに話しかけたのだろう?


……。


 知らない?


 どこかで聞いた、さっきの言葉が頭の中をぐるぐると駆け巡り、時間が時間ではなくなっていっているのを感じた。

 私はどこにいる?


 ああ、あ……。


教室に、いる。



 女子は何かしないと気がすまないと思ったのか、千羽鶴を折っていた。それを見てから午後になった。あり得ない。午前、何をしていた?

 確実に何かがおかしかった。

 まさにサイエンスフィクション。何が起こってもおかしくない。

 女子たちは声を上げてわめき泣いていて、千羽鶴はちぎれてぐちゃぐちゃにとっちらかっていた。

 それから中学3年生まで、同学年の女子とはメグミ以外、ほとんど話すことはなかった。女子の多くが私を畏怖していたのだ。理由もだいたいはわかっていた。怖がっているとは違う、やはり畏怖しているんだ。


 私は間違いなく誰よりも庄平のことを知っていた。だからもし、庄平が目を覚ました時に千羽鶴があったのを見たらどう思うだろうか。どうするだろうか。嬉しいなんて思わないよ。着火するだろうね。ライターで小学校のアルバムの写真を切り抜いて、気に食わないヤツのものに着火していたもんな。


 それに、千羽鶴はよく燃えるだろう。


 まあ……から、大丈夫だ。庄平が千羽鶴を目にすることはないし、もちろん着火もしない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る