第9話

「今日呼び出したのは他でもありません。――会長」

「うん?」

「昨日、俺に何かしましたね」

「…………してないよ」

「これ」


 柏田に撮ってもらった写真を会長に見せると、すっ、と眼を逸らされる。


 そして――


「ぼたん」

「んー?」

「お前も、知ってるな」

「何を? ってかなんで呼ばれたのかも分かんないんだけど」

「しらばっくれんなら別に良い。最後に――君塚先輩」


 君塚先輩が、黙ってスマホをこちらに向けようとするので――

 その手首を掴んだ。4歳から13年間柔道やってる俺の手技は、いくら運動部の君塚先輩でも捌ける速度ではない。


 かたん、とスマホがテーブルに落ちる。「あ」スマホに視線を落とした君塚先輩が声を漏らすと、急に動きを止めた。


 ――止まったのは、先輩だけじゃない。ぼたんも、会長も。スマホに視線を落としたまま、動きを止めている。


 つまり――


「ま、マジで……?」


【催眠アプリ ver2.01 操りたい人にしか見せちゃダメっ! 不具合報告はぼたんまで】


 君塚先輩の手から落ちたスマホの画面には、そう表示されていた。

 俺、催眠アプリを使われていたらしい。……マジで?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

催眠アプリを、使われる方。 衣太@第37回ファンタジア大賞ほか @knm

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画