第2話
ここは生徒会室。全方位に書類の詰まった棚があり4人の席を確保するので精一杯の、狭い部屋だ。
普通、漫画とかの生徒会室って教室くらいデカい部屋にどどんと理事長みたいにデカいテーブルがあってそこに会長が座り逆光が差し――なんてのを想像するが、全然そんなことはない。
「会長」
「うん?」
「昨日、オリオン通りに居たって聞いたんですけど」
ビクッ、と震える会長は、成績優秀眉目秀麗、まさに生徒の憧れのような3年生だ。
身長は170cm、吹奏楽部の部長を兼任しており、担当楽器はチューバ(なんかデカいやつ)。文化部なのに運動神経抜群、スポーツテストは運動部の男子よりも良い成績を残す。
常に落ち着いた言葉遣いで、浮ついた噂もなく、先生からの評判も良く、生徒からの信頼も厚い。得票率98%で当選したそんな会長は、明らかに冷や汗をダラダラ流し、俺から目を逸らした。
「…………会長?」
「な、何かな、葛木書記」
「なんすかその呼び方」
「お、オリオン通りで、誰を見たって?」
「会長と、俺」
がたんっ。
会長が、顔を赤くして立ち上がる。
「ひ、ひひひひ人違いじゃないかなぁ!?」
そんなデケェ声で言わなくても聞こえるよ。
「ですよね」
「え?」
「いやだって俺、昨日帰ってゲームしてただけだし、会長も行ってないんですよね」
「え、あ、うん」
「じゃあ俺のそっくりさんと会長のそっくりさんがオリオン通りでデートしてただけですね、やっぱり」
「…………うん、そうだね」
なんだか残念そうな顔をした会長が、すとん、と腰掛ける。
息を整え、いつもの真面目な表情に戻った。
「ちぃーっす」
ばたん、と勢いよく扉が開かれ、女子生徒が生徒会室に入ってくる。
生徒会副会長、君塚さと。会長の幼馴染で、会長とは真逆のどう見てもスポーツ女子って感じの女子生徒だ。
体操服を胸の下でぎゅっと結んでいる。小麦色のおへそが見えたので、思わず眼を逸らす。
「さと、いつも言うがその格好は――」
「えー、あ、葛木ちゃん居た? ごめんごめん」
「……あ、一応隠してくれるんですね」
「そりゃ男子の前だしね、あたしも痴女じゃねーし」
「助かります」
「見る?」
「見ません」
君塚先輩は、ちっ、とわざとらしく舌打ちすると、結び目を解いておへそを隠してくれた。 若干名残惜しい気もするが、ちらちら見えると男子高校生の目に毒なので、助かる。
「んで昨日、どーだったの?」
「さとっ!?」
会長は焦った様子で「しーっ!」と指を立てて音を鳴らす。黙らせるにしてはうるさすぎるだろ。
っていうか、やっぱりなんかあったのか? まぁ男子に言えないような話かな。
「や、別にいーじゃん。ほら、また使えば」
「……いや、だからってそんな堂々と――」
「はいぽちー」
君塚先輩がスマホを操作してると思ったら、その画面を俺に見せ――――
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