連行

男は警察車両に乗せられようとしている。


『オイ暴れるな!首輪をつけられてえか!調子にのるんじゃねえ!おい相棒!仕方ねえあれよこせ!』と捜査官十夢(とむ)はじたばたをする男に手を焼いた。捜査官のもう一人である若手の来呑(らいどん)はトランクを開け、どっしりとした重さの拘束具を持ち出した。往生際の悪い奴だ、男はまんまと電流が流れる首輪を付けられ、失神した。


『ちぇっ。手の焼けるやつ。』と言って十夢は男を警察車両の後部座席に乱暴に投げ込んだ。助手席に十夢が乗り込む。十夢はトランシーバーで犯人を逮捕した報告を本部にしていく。


しかし報告が終っても、トランクを開けて拘束具を出すだけだったはずの来呑がなかなか運転席に回ってこない。後ろを見るとまだトランクは開いている。そして後部座席の男は大人しく寝ている。


『おい何やってんだ早くしろ!若けえやつはこれだから使えねえ!』と十夢は怒った。もともと気が短いほうだが、近ごろより短気になったことは十夢も自覚していた。といっても、反省する気はさらさらない。


バタンとトランクが閉まり、来呑が助手席に乗り込んでくる。『ああ、すみません。ちょっとぼーっとしてて。』と彼は言う。


『早く出せ。俺たちコンビはお前が遅いから上からカンカンに怒られてる。しっかりしてくれよ。まったく。』と十夢は怒った。


『すみません。では、発車します。』と来呑がいうと、そろそろと車が動き出した。少し何かに乗り上げて、ガタンと音がして揺れた。十夢が『下手くそが』と罵る。

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