勝手な思い込み
しゃもこ
勝手に思い込んでいた!
前回、未知のお題でマカオを旅したときの事を書いた。その関連でもう一つ思い出したことがある。
私は、空港内のパウダールームで子どもの髪を結い直していた。
乗り継ぎのために立ち寄った香港の空港にはかなり広めのパウダールームがあった。子連れには非常にありがたい場所である。
マカオからの船旅で崩れた娘たちの三つ編みを整えていると、鏡越しに黒い気配を感じた。アバヤ姿の2人組だった。
海外の空港ではそれほど珍しくない光景だ。
彼女たちはパウダールームに入ってくると、静かに荷物を置き、周囲を気にする様子もなくアバヤを脱いだ。
次の瞬間、私は思わず手を止めた。
彼女たちが、その真っ黒な布の下に着ていた服が驚くほどに鮮やかだったからだ。
「ど派手」という言葉が頭に浮かぶと同時に、少し戸惑った。
私は勝手に思い込んでいたのだ。黒い布の下もきっと慎ましやかであると。勝手に。戸惑うのは筋違いも甚だしい。
彼女たちは、当然のようにアバヤを椅子の背に掛け、髪を解き、メイクを直していく。
中東の女性は美しい方が多いと言うが、彼女たちも本当に美しい女性たちだった。
実はアバヤは、彼女たちにとっては殻のようなものなのかもしれない、と思った。
中身を見せないためのものではなく、外の衝撃から身を守るための薄くて硬い殻。
彼女たちは、女性だけの空間では殻を外し、外へ出るときには何事もなかったように殻を身にまとう。その中にものすごく美しいものを包み込んで。
パウダールームを出る頃、私は自分の中で、何かが割れる小さな音を聞いた気がした。
割れたのはアバヤでも卵でもなく、世界を単純に見すぎていた私の心の殻だった。多分。
勝手な思い込み しゃもこ @syamcoHEIZAN
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