第1章:ステータス画面は目に悪い
『カイトは立ち上がり、衣服についた土を払った。その時、彼はズボンのポケットに違和感を覚えた。』
(ん? なんだ? 何か入ってる?) (あー、分かった。これ、あれだ。「前の世界の未練」的なアイテムだ。 普通なら彼女の写真とか、家族のお守りとかなんですけどね。)
『彼は震える手で、それを取り出した。そこに記されていたのは、かつての世界の残滓(ざんし)――「ツナマヨ 110円」の文字だった。』
(……読ませるなよ!) (せっかくイケボで雰囲気作ってたのに、なんで「ツナマヨ」なんて言わなきゃいけないんですか。 しかも「110円」って。消費税込みかよ。生々しいな。) (ほら、カイト君も「あ、ゴミ入ってたわ」みたいな顔でポイ捨てしないで。伏線かもしれないでしょ!)
『気を取り直し、カイトは決意の眼差しで空を見上げた。「よし、まずは自分の能力を確認だ!」』
(はい出ました、異世界転生のお約束。) (さあ皆さん、ご唱和ください。せーの……)
『「ステータス・オープン!!」』
(……声でかっ。) (うわっ、眩し!!) (目の前に半透明の青いウィンドウが出現しました。これね、発光してるからナレーション席から見てると結構目にくるんですよ。ブルーライトカットとかないのかな。)
(で、これを読み上げるのも僕の仕事ですか? ……はぁ。システム音声っぽくやればいいのね。了解。)
『【名前:サトウ・カイト】』 『【職業:異世界からの迷い人】』 『【レベル:1】』
(……ここまではテンプレ通り。問題は能力値か。)
『【体力:8】』 『【魔力:3】』 『【運:-50】』
(……ん? 待って。マイナス?) (運の数値、マイナス50って書いてある。) (ちょっと、聞いてないですよ。ハードモードすぎません? これ、僕がこれから「不運な出来事」を無限に描写しなきゃいけないってこと? 「歩くと鳥のフンが落ちてきた」とか「宿屋のベッドが爆発した」とか? 勘弁してよ……。)
『「なるほど……平均的なステータスか。これなら戦える!」』
(ポジティブっ!!) (カイト君、君の目は節穴か? 「運:-50」が見えてないのか?) (……あ、違うわ。ウィンドウにヒビが入ってて、「-」の棒が見えてないんだ。「運:50」だと思ってる。)
(教えてあげるべき? 「あのー、すいませんナレーションですけど、君めちゃくちゃ運悪いですよ」って。) (……いや、やめとこう。ルール違反だし。) (何より、彼がこれからどんな不運な目に遭うのか、ちょっと見たくなってきちゃった。)
『カイトは自信満々に剣を握り直した。「待っていろ魔王、必ずお前を倒してみせる!」』
(どうぞどうぞ、ご自由に。) (ちなみに君が進もうとしてるその方向、さっきドラゴンの巣が見えましたけどね。) (ま、言いませんけど。だって僕、ナレーションだもん。)
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転生したらナレーションだった件 ~効果音は口でやってます~ niHONno @niHONno
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