第6話 メタモルフォーゼ

家庭という組織の歪みから、僕は逃げたかった。

だから、他人に縋ることにした。


「恋愛」という人間関係を、試してみることにした。


すぐに気付いた。

恋人という存在は、「愛」を理由に僕を支配する。


それは、両親から受けた支配と同じだった。

形が違うだけで、本質は変わらない。


僕は、また逃げ出した。


家庭という組織。

親族という檻。

世界から拒まれ続ける僕。


人間に擬態しても、生き残る方法は見つからなかった。


大人になった僕は、ついにメタモルフォーゼした。


「人間に擬態しても、意味がない」


そう理解した。


異物は、異物として生きた方がずっとラクだ。

それが僕の答えだった。


僕のメタモルフォーゼは、兄とは真逆だった。

兄は世界に溶け込むために変態した。

僕は世界を拒絶し、感情を残すために変態した。


それが、僕の生存方法だった。


そして今日も僕は、

人間に擬態し続けている。





───終わり。

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メタモルフォーゼ 余白 @YOHAKUSAN

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