第29話




 遊園地の先に道が続いているということだった。その道を進んで行って森が抜けられますかとたずねると、ナマケモノは、抜けられる。昔々、向こうからきた人もいたから。と答えた。それで一同はカピバラのじじいと別れて、(せんべつに、ガマシーは筮竹ぜいちくという、占いに使う竹の棒を一本もらって、大切にきんちゃくへ入れた。)遊園地をつっきり、反対側のアーチをくぐった。


 出口のアーチには《adieu…… いいことあるさ!》と書かれてあった。


 地面がでこぼこしてからも、ガマシーはチョッパーバイクを軽々と押していた。森の中の道は、ずうっと木漏れ日がさしていて、うす明るかった。


 水飲み場があったので、水筒の中身を入れかえて、休憩した。木にハンモックをつるし、鈴花とガマシーは二人ぎゅうぎゅうになって昼寝した。鳥子さんはやわらかな草の上へ大の字になって寝ころがっていた。


 鈴花はなにか夢を見たけれど、起きると忘れていた。なぜだかさみしい気分だったけれど、気のせいであることにした。


 鳥子さんとガマシーが荷物の整理などしているあいだに、日記を書いた。まず要点だけを殴り書きにして、読み返し、すき間にいろいろ書き足した。いつか清書しなければならないなと思った。


 ふと、このままではいけないような気もしてきた。書くならば、家にじっといて、ちゃんと書きたい。けれどもあちこち歩きまわらないと、書く内容も出てこない。二つ同時にはできないことが、もどかしかった。


 ヒマそうにしているガマシーに相談すると、自動的に書いてくれる、「自動日記」とでもいうようなものがあればいいのにという、なまけた希望が、ハッキリ現れてきた。


「でも、そんなのあるかしら」

「どっかにはあるでしょうよ」

「あっても、高そうよね」

「それに、こんな森の中じゃな。もっとこう、進んでる国の、都会とかじゃないと」


 鈴花がしょんぼりため息をついていると、ガマシーはそれを見つめて、


「そんなにほしい?」

「うん」

「じゃあ、あたいお祈りしてみるから。ダメだったらあきらめてよね」


 そうして、ガマシーは、しばらくうんうんうなっていた。また貧血で倒れるよと心配すると、お祈りのしかたをよく知らないのでしょうがないのだと答えた。やがて真っ赤な顔で、


「とりあえずやってみたから、どうなるかわかんないけど――」


 と言って、この話はおしまいにした。



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