第27話




 いちどだけきれいなせせらぎのほとりで焼き芋休憩をとり、捨てられて野生化した熱帯魚をながめて遊んだほかは、こぶりな山々の上をずっと飛んでいた。


 山々が終わり、大地が青々した野原になって、しばらくすると見果てない森が見えてきた。あの森で降りようと、カピバラのじじいが言った。


 鈴花がトランシーバーで、


「なにかよさそうなの?」

「そうさな。とんでもなくよさそうな感じがするわ」


 降り立つところを遠目に探しながら近づいて行くと、森の入り口のような、巨大なアーチがあったので、そこへ降りた。


 空から見た時の印象よりも、まぢかに見上げる森の木々は高かった。大きなアーチは、遊園地の入り口で、《Welcome! 覚悟はいいか?》と書かれてあった。しかしたいへん錆びていて、ツタまみれで、アーチいっぱいについている電球も、ほとんど割れていた。


 パラシュートとハンモックをちいさくたたんで、入って行くと、果たして、さびれた遊園地であった。ずいぶん広そうだが、空からはちょっとも見えなかった。森の木々が隠しているわけだった。


 廃業して久しいらしく、いろいろなアトラクションが静かに錆びていた。とにかくトイレを探した。みんな、けっこう差し迫っていたので。すぐに見つけた。おせじにも清潔とは言えなかったけれど、紙はあったし、水も流れたのでホッとした。


 あらためて歩きまわると、やっぱりトコトンさびれていた。なにも売っていない売店には、ねむそうなダチョウが住んでいたし、ジェットコースターの骨組みには、ナマケモノやトカゲがくっついていた。



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