第25話
ガマシーがあごをかきながら、
「また会うんなら、手っ取り早く、これからいっしょに行かない?」
「いいんかね」
「いいよね?」と鈴花を見た。
「うん」とうなずいた。
それでカピバラのじじいは、商売道具をたたんで、えらくコンパクトになったのを背負うと、準備完了と言った。
「あたいたち、とくに目的もなくってさ」
「それはいい。……そっちに行くとよさそうじゃの」
それでそっちに行ってみると、売りつくしセール中の焼き芋の屋台が出ていたから、タダ同然でたくさん買った。そのまま路地をすこし歩くと、ちいさな広場に出た。水のとまった噴水のへりに、三人ならんで腰かけた。
「鳥子さん、はぐれないかな」
と鈴花が言った。もしかしたら、このまま……と頭によぎった時、
「じきにくるじゃろうて」
と、焼き芋をちびちび食べながら、カピバラのじじいが言った。
広場を四角くかこんで建つ古いアパートの、一つの窓から、ちいさな女の子が見下ろしていた。鈴花が手をふると、隠れた。しかしすぐに、人形を出して、手をふらせていた。
果たして、鳥子さんがやってきた。二人と合流する前に、すこし歩こうと思って、歩き出してすぐに、やっぱり探そうかなと思った矢先、ここに出てきたのだそうな。
「キャラメリーノさんは?」
と鈴花が聞いた。鳥子さんは、どこかさみしそうにうなずいて、
「とにかく、いちど出た家には、手ぶらでは帰れないから、ここでしばらくがんばってみるって」
そう言うと、鈴花のとなりに座り、焼き芋を受け取った。カピバラのじじいとあいさつし合っていると、ガマシーが、
「あたい、弟さんは、きっと立派な人になって、家に帰ると思うな」と言った。
「ありがと、ガマシー」
と言って、鳥子さんはほほ笑んだ。
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