第21話
あたたかな丘があったので、三人ならんで寝ころんで、気持ちよく目をつぶっていると、ウトウトしかけてきたころに、大きな影がさした。
雲にしてはあんまり暗い、雨雲かしらと思って目を開けると、空を町が横切って行くのだった。
下から見えるのは裏側で、大部分が岩や土や、無数のパイプや歯車だったけれど、それでもイソギンチャクのようにくっついた家や、倉庫みたいな建物がチラホラあった。
ゆっくり進んでいるけれど、雲の流れる方向とちがっていたから、風に流されているわけではないらしい。さらにだんだん速度を落としたと思うと、三人の頭上を通りすぎてすぐのところに、とまった。
と、下からは見えない上側から、鳥子さんのような人たちが、なにか荷物をさげて、一人また一人と出てきた。みんな同じほうに飛んで行く。行く先を見やれば、ゆるやかな起伏のつらなる野原の向こうに、なかなか大きそうな町が、建物の先だけちょこちょこ見えた。
「あれは、あきんどたちね」と鳥子さんが言った。「なにか商売しに行くんだわ」
「もしかして、あの町、鳥子さんのふるさと?」
鈴花が聞くと、鳥子さんはかぶりをふった。ガマシーがきんちゃくからちいさな双眼鏡を取り出して、空の町の裏側を見物していた。やにわに、ヤッと声を上げて、
「向こうにも、こっち見てるのがいる!」と言い、手をふったけれど、チェッと舌打ちして、「シッシッてしやがった」と言った。それから仕返しに、ぺっと舌を出した。
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