第17話




 天までとどく木の下に行った。枝葉のほとんどない、ざらざらした幹ばかりが、ずうっと空に伸びていて終わりは見えない。見上げるとくらくらする。木陰が町を真っ二つに割っていた。


 どうやって上まで持って行こうかと話し合った。


「鳥子さん、ぴゅって行って、できない?」


 と鈴花が聞くと、鳥子さんはかぶりをふって、


「横にだったらいくらでも飛べるけど、縦はそんなに得意じゃないのよ。あんなに高くまで飛ぶのは、ちょっとキツイわね」

「そっか……」

「うん――だけどまあ、私が行くしかないかな」


 鳥子さんは暗い顔で、とりあえず翼を出した。するとその時、コアラのじじいが名乗り出た。


「わしが行こう」

「どうやって?」と鈴花が聞くと、

「気長によじ登って行くさ」と言う。

「だけど、それじゃ何日も何週間もかかるんじゃない? 鳥子さんにまかせたほうが――」

「なに、わしゃね、もうこのトシだし、元気なうちになにか大きな仕事をしておきたかったんだ。大きな、いい仕事をね。無事になしとげて、戻ってこられたら、お前さんたちを探すよ。また会えるといいね」


 それで、一同はハグし合った。ちいさなチョッパーバイクは、ガマシーがゆずり受けた。


 加湿器を背中にくくりつけて登り始めたコアラのじじいと別れて、鈴花たちは歩き出した。


 さみしい気持ちをまぎらすように、これからの相談をした。とんがり耳にしてくれる魔女を、探していたからガマシーに会えたわけで、とんがり耳になれたわけだが、なれたからには、ちゃんと見つけるまで魔女を探しきらなければならないという結論になった。


 肖像画家を探していたことは、もうどうでもよかった。やるべきことが見つかった、今となっては、もうなんの魅力も感じないことだった。


 町を出た。見果てない荒野の上を、鳥子さんにぶら下がって飛びながら、鈴花がふり返って見ると、天までとどく木の、ずいぶん下のほうに、ちいさな点がついていた。


 コアラのじじいは手をふっているように見えた。点がすこしぴこぴこしていたので。


 鈴花と鳥子さんも手をふり返した。地上で土煙を上げながらついてきているガマシーも、彼女からは見えなかろうに、ふり返って手をふっていた。



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