第14話




 先っぽまで軟骨らしく、ちょんちょんさわってみる指を、強くはね返してくるのだった。


 晴れてとんがり耳になれたからには、ぜひとも写真を撮りたいと鈴花が言った。するとガマシーが、旅立ちのために家の中をせっせと片づけながら、


「写真より、肖像画のほうがよくない? そのほうがぐっと値段もはるし、できるまで時間もかかるし、そのあいだジッとしてなきゃならないしさ」

「肖像画家を知ってるの?」と鳥子さんが聞いた。


 ガマシーはぼろぼろの人形をしばらく見つめて、それを「置いていくほう」の箱にそっとしまうと、鳥子さんにうなずいて、


「すっごく偉い人しか描かない絵描きを知ってるわ。あたいみたいな変な子が好きらしくって、よくごはんをごちそうになっているもんで、頼まれたら断れない恩があるのよ」

「どっちに恩があるの?」

「そりゃ、あたいのほうよ」

「わたし、ぜんぜん偉くないけど」と鈴花が言うと、

「なァに、自分は偉くないってね、ほんとうに偉い人はみんな言うんだから。それが言えりゃ描いてくれるわよ」


 したくを終えると、ガマシーは住み慣れたちいさなあばら家の扉を閉めた。鍵を鍵穴にさしっぱなしにして、《さあ、お次は誰だ?》と書かれた札をかけた。


 肖像画家の住んでいるお宅に向かって、歩いているうちに知ったところでは、このこじんまりした町は、空気がたいへん乾燥しているとのことだった。


 ガマシーの話によると、近ごろの異常気象で、逆さ梅雨前線が空に居すわり、植物もぱさぱさ、いつどこで火が燃え出すかわからない、燃え出したら一気に燃え広がることだろうと、人々は心配しているそうな。


 みんなおなかがすいていたので、レストランに入った。ガマシーは白い目で見られたり、あたたかく手をふられたりしていた。


 注文したものを待っているあいだ、机に日記帳を広げて、鈴花はこれまでのことを簡単に書いた。


 書き終わるころに料理がきた。



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