第13話
「よし、ひとつ叶えた。これで信用してくれる? まだ足んなかったら、あたいの名前も決めていいよ。ほんとうの名前、ずっときらいだったんだけど、きらうのをやめたら、忘れちゃったの」
「名前を決めるのは、とても重大なことよ」と鳥子さんが言った。「これ以上ないくらいに、儀式ばって、かしこまって、おごそかにおこなわれるべきものだと思うわ」
「それを、チャチャっとやってよ。好きなだけ呼んでいいから」
鈴花と鳥子さんとコアラのじじいは、ふたたび相談した。そうして、鳥子さんがアイデアを出し、コアラのじじいがまとめ、鈴花が発表した。
「サシデ・ガマシーっていうのはどう?」
(差し出がましいから。という由来は伏せた。)
「どっちが苗字?」
「サシデ」
「じゃあガマシーって呼んで。よし、これであたいの、高望みを叶える力が証明されたわ」
「叶えたのはわたしたちじゃない?」と鈴花が聞くと、
「なおいいじゃない。四倍よ。それに手段はどうあれよ」
かくして、証明されたということにしておいて、鈴花は、あらためてガマシーに、とんがり耳を頼んでみた。
ガマシーは引き受けたと言うと、顔を真っ赤にし、うんうん気張って、けっきょく、貧血になって倒れた。
ここまでしてくれたのだから、ほんとうに仲間にしてあげようよと言いつつ、鈴花はハンカチであおいであげた。ガマシーは鈴花を見上げて、
「あんた、いい子ね――」
そう言って、苦しそうに目をつぶったと思うと、鳥子さんとコアラのじじいが、アッと声をあげた。
鈴花は耳をさわってみた。みごとな、とんがり耳になっていた。
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