第9話




 たどり着いてみると、館は雨漏りや湧き水がひどく、住めるところはゆいいつ乾いているぐらぐらの塔だけで、コアラのじじいはそこに住んでいた。


 じっさいに会って見てみると、なるほどコアラのじじいだった。


 大小さまざまなユーカリの苗木が、ギッシリ置かれてある螺旋階段を上りつめた、てっぺんの部屋で、ユーカリの葉巻をプカプカふかしていた。


「なぜかすごく長生きしてね」と、たいへん低い声で言った。「だけど、幼いころのこともシッカリ覚えている。最初からわしはコアラだった。途中でこうなったんじゃなくてね」


 情報屋さんとしてたずねたわけではなかったけれど、とんがり耳にしてくれる魔女について、いちおう聞いてみた。ユーカリのお茶を入れてくれていたコアラのじじいは、ふむ、と言って、


「わしに聞かれても困るが、そういうものを探しに行くんなら、わしも連れて行ってくれんかね。『三人寄れば文殊の知恵』というから、君たちにとっても、利益になることだと思うがな」


 鈴花と鳥子さんはいったん部屋を出て、相談した。結論として、べつに断る理由もなかった。


 さっそくコアラのじじいは、留守のあいだ苗木の世話をしてくれる人をつのる伝書バトを出すのに、達筆な字でなにやら書き始めた。鈴花と鳥子さんはユーカリのクッキーをごちそうになりながら待っていた。


 やがて伝書バトが飛んで行った。


「それじゃァ――」と鳥子さんが言った。「どういうふうに出発しようかしら」


 それは、コアラのじじいが同行するとなった今、鳥子さんが鈴花を持って飛んで行くという選択肢がなくなった、という意味だった。


「歩いて行くか、ロバなりラクダなり買いに行くか――長旅なら馬車がいるかしらね」

「タクシーなら、運転手に知り合いが一人いるよ」とコアラのじじいが言った。「長旅を乗せてくれるかどうか、ちょっと聞いてみよう」



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