第8話




 近くにあったベンチに座って相談した。けれど二人とも世間知らずで(鳥子さんは、最初感じた印象ほどは、大人ではないらしかった)、相談のしかたもわからない。


 鈴花がしょんぼりしていると、鳥子さんが明るい声で言った。


「まあ、探しに行こうよ。子どもでもできる仕事。じっさいに探せば、なんか見つかるかもしれないじゃない」

「――子どもは働いちゃいけなくて、タイホされるかも」

「その時は事情を話せば、わかってくれるよ。一発でぶちこまれるこたァないでしょ」


 鳥子さんは立ち上がったけれど、鈴花は座ったままでいた。そしてボソリと、


「……仕事より、わたしも鳥子さんみたいになりたいな。そのほうが手っ取り早いから」

「そらそうね。じゃあ、どうする? 鈴花も翼がいい?」


 鈴花は鳥子さんを見上げて、


「どういうこと? わたしもなれるの?」

「最初から私と同じ種族だったことには、できないでしょうけどね」

「よくわかんないけど、それでもいいよ!」

「待って待って、ぴょんぴょんしないで。とりあえず決めとこうよ。翼だったら、ならんでいっしょに飛べるわね」

「ほかにもあるの?」

「あるある。ツノとか、キバとか、しっぽとか、水かき、三つ目、とんがり耳、毛むくじゃら……すぐに全部は思いつかないけど、もっとあったわね」


「どれが尊敬されるの」

「尊敬?」

「お金がなくてもおおかたうまくいくのは、尊敬されるからでしょ?」

「尊敬――かどうかはわかんないけど、そんなものなのかな。どれが尊敬されるかは、きっと土地によるよね。あと時代とか、なにせ場合よね」

「じゃあねェ……、そうねェ……、」としばらく悩んだすえ、「――とんがり耳がいいな」

「え、ほんとにそれでいいの? あんまり便利じゃないけど」

「うん。なんか、便利じゃないほうがいい。いったん。それに、よすぎるとなんか、それなりの代償を払わなきゃならないとかって言われたらイヤだし」

「ふうん? よくわかんないけど、よっしゃ。話は決まった。それじゃあいよいよ、そういうこと叶えてくれる神さまがいるかどうか、探しに行こうか」


 鈴花はガクッときて、


「なんだ。鳥子さんがしてくれるんじゃなかったの」

「私にそんなことできっこないわよ。神さまでもなきゃ」

「神さまがどこにいるか、これから探すの?」

「というか、そもそもそんな神さまがいるかどうか、知りに行くところからよ」

「なんだ……絶望的なんじゃない」

「それなら仕事探す?」

「ううん。神さま探す。――あっ、待って。神さまより、魔女に叶えてほしいかも」

「魔女か。まあそのほうが簡単そうね」

「そうでしょ」


 さてしかしなんの手がかりもなし、どうやって探すか考えて、そういうのにくわしい情報屋さんなんかがいるかどうか、ひとまず交番で聞いてみたけれど、よく知らないということだった。


「交番じゃわからないようなところにいるんじゃないかな」と鈴花。

「それもそうね。暗い路地とか、酒場かな。ひとまず酒場で聞きこみだな」


 そういうわけで、酒場に行ってみたけれど、早い話が、はかばかしくなかった。ただ、情報屋さんとは関係がないけれども、「コアラのじじい」という人物がいることがわかった。なんとなく物知りそうな感じだったので、その人に会いに行くことにした。


 町の中央の大きな噴水を軸にして、なにか王さまの住んでいらっしゃるお城の、ちょうど反対側にある、クタクタの館に住んでいるということだった。



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