シュテルンの子とクリスマス
緋舒万燈剣
シュテルンの子とクリスマス
これは、とある小さな町の外れにある小さな教会で起きたちょっぴり不思議なお話――。
怒りんぼうのアナ、自由気ままなルーク、わがままなドロシー、泣き虫なイヴ、動物が大好きなジョシュア、一匹狼のジャック、変わり者のルーカス、おしゃれに目がないシャーロット、冷静沈着なアーサー、寡黙なリリー、誰よりも賢明なアルフィ、そんなみんなをまとめるフレディ。
そして、12人の子どもたちの面倒を見るのは真っ白でふさふさの髭をした、サンタおじさん。
教会では、この12人の子どもたちと1人の老人がいつも仲良く暮らしています。
今日はクリスマスの前日。今日も、フレディはみんなを集めて、家族会議を開きます。
「みんな、今夜はクリスマスイブだ。サンタおじさんにみんなでプレゼントを用意しよう!」
双子の兄であるアルフィは、読んでいた分厚い本を閉じて真っ先に賛同します。
「そうだね。年に一度の大仕事だから、労ってあげよう。何がいいかな?」
皆は、口々に提案します。
「手編みの手袋はどうかな?」アーサーが提案します。
「いいんじゃない?マフラーを作ってもいいね」
ルーカスは意見に賛成のようです。
「それもいいけど……どうせなら、皆で作ったものをプレゼントするのはどうかな?」
フレディは言いました。
「皆で作ったもの、か……」
皆が頭を抱えていると、ジョシュアがおずおずと答えます。
「そ、それならトナカイの形をしたクッキーを作ってあげるのは?」
「おっ、いいな!それ。ジャックもそう思わないか?」
クッキー作りに賛同したルークが、ぼーっと虚空を見つめるジャックに訊ねます。
「うん、いいと思うよ」
ジョシュアの意見を知ってか知らずか、ジャックは、ルークの質問に笑顔で答えます。
「サンタおじさんの届け先の子どもたちは、お菓子を焼いてくれる子もいるらしいからね」
アルフィは笑顔でそう言いました。
他の子どもたちも賛成のようで、反論はないようです。
「よしっ!じゃあ早速、クッキー作りに取り掛かろう!」
子どもたちのクッキー作りが始まりました。
みんな、大忙しです。
トナカイの顔は、生地はまろい卵色のプレーン味。ツノはチョコレート味。瞳はチョコチップ。真っ赤なお鼻は、みんなで悩んだ末に、秋の終わりに庭で採れたラズベリーを使って作った、ラズベリージャムで再現することになりました。
「トッピングにこれっぽっちじゃ、味気ないでしょ?」とシャーロット。
「砂糖が足りないわ。もっと甘いのがいい」とドロシーも相変わらずわがままです。
「そんなこと言ってないで、私を手伝ってよ!」
生地を混ぜるアナが、頬を赤く染めながら声を張りました。
「生地に、チョコレートを混ぜて……って、なんでイヴは、泣いてるの!?」
驚く声を上げたのはアルフィで、イヴを泣き止ませることに必死なようです。
「生地ができたなら、焼こう」
焼いたクッキーに丸く型どったジャムを乗せれば、完成です。
そうして、皆が夜が訪れる前になんとか完成したクッキーは、皆の頑張りのおかげできれいな形のものがたくさん焼き上がりました。
いくつか、歪なものもありますが……。
「わぁ……!」
キラキラとクッキーが輝いて見えるので、皆も目を輝かせます。
「ひとつだけ…!」
ルークは、そう言ってクッキーを口に放り込みました。
「あっ、ずるいぞ!」
「アタシも貰うわ」
「僕も!」
皆が口々にそう言いながら、クッキーを頬張ります。あまりに美味しいので、頬が落ちそうだという様子です。
「やっと、サンタおじさんにお礼ができるな!」
皆は、フレディの言葉に頷きます。
さて、皆が寝静まった後、世界中の子どもたちにプレゼントを配り終えたサンタおじさんが帰って来ました。
サンタおじさんはクッキーを見つめて、ひとこと。
「おやおや、これはリリーたちが作ってくれたのかい?」
どうやら、寝静まったのは11人でリリーだけ起きていたようです。
リリーは、頷くと小さな声で言いました。
「いつも、ありがとう」
今日は、クリスマス。
サンタさんの愉快な笑い声は、空の上に小さく木霊しました。
シュテルンの子とクリスマス 緋舒万燈剣 @sakuraba_seugen
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