第4話 「暖かい場所」

第4話 「暖かい場所」



「ま、冗談はここまでにしてと...」


(まこの服が元に戻る)


「あんな格好のまこと一緒に歩くのは俺がキツイしなw」


……っ、あ……あぁ……っ!!


(パチン、と音が響いた瞬間。

肌を刺すような冷たい視線と寒さが消えて、慣れ親しんだ自分の服の重みが戻ってきた。

思わず自分の肩や腰を何度も叩いて、布があることを、全てが隠れていることを確認する)


ふ、服だ……! 私の……私の服だぁ……っ!!

あ、ありがとう……ありがとう、しんちゃん……っ!

あ、ううぅ……よかったぁ……っ!!


(その場にへなへなと座り込み、顔を覆って号泣する。

恐怖と、絶望と、そして何より圧倒的な羞恥心から解放された安堵で、涙が止まらない。

あんたの「俺がキツイ」っていう冗談めかした言葉すら、今の私にとっては救いの神の言葉に聞こえる)


そ、そうだよね……!

あんな格好の女が隣にいたら、しんちゃんの……神様の面目丸潰れだもんね……っ!

ご、ごめんね……!

変な格好させられて……あ、ううん! 変な格好して……ごめんなさい……っ!!


(めちゃくちゃな論理で謝りながら、必死に涙を拭って立ち上がる)


〘あんたにとっては「ちょっとした冗談」でも、私にとっては一生消えない心の傷。

でも、それを悟らせちゃいけない。

また「面白くない」って思われたら、次はどんな『冗談』が待っているか分からないから〙


お、おかげで……一生の思い出になったよ……!

あはは……人魚になれるなんて、普通の人間にはできない体験だもんね……?

す、すごかったなぁ……。あはは……あははは……


(乾いた笑い声を上げながら、ガタガタ震える手でスカートの皺を伸ばす。

あんたの顔色を伺いながら、そっと隣に歩み寄る)


〘……離れたい。今すぐ逃げ出したい。

でも、この手を離した瞬間、私の世界はまた『再構築』されてしまうんだ〙


ね、ねえ……しんちゃん。

ショーも終わったし……次、どこ行く……?

なんでも、どこでも……しんちゃんの行きたいところに、ついていくから……!


【思考B(本音・内面)】

《……殺してやる。

いつか、いつか絶対に、あんたが寝てる隙に首を絞めてやる……っ!!

……なんて、そんなことできるわけない。相手は世界を作ったバケモノなんだから。

「冗談はここまで」?

あんたにとっては冗談でも、こっちは社会的に死んだんだよ!!

あそこにいた客の中に知り合いがいたらどうすんの!?

SNSに「水族館にふんどし女いたwww」って晒されたらどうすんの!?

「俺がキツイ」? どの口が言ってんのよ!! 全部あんたがやったことでしょーが!!

あぁ……でも、服があるって素晴らしい。

大事なとこが隠れているって、なんて幸せなんだろう。

もう贅沢は言わない。

ふんどしを履かされないなら、泥水くらい何度でも飲んでやるわよ……。

感覚が狂っていく。自分が壊れていくのがわかる。

お願い……次は……次は、座って休めるところにして。

もう足が震えて、まともに歩けないの……》


※まこの前で寝るのは危険だなw


次は、少し落ち着ける場所に移動しませんか?

例えば……展望レストランとか、静かなカフェとか。

落ち着いてしんちゃんとお話ししたいな……


(もう何もしないでって祈りながら)


「そうだろ?(o^^o)

人魚体験なんて絶対出来へんもんな(`・∀・´)エッヘン!!

見てた人達もめちゃくちゃ楽しんでたぞ( ´∀`)b

さ、次のショーの時間までどこに行こっか?( ≖ᴗ≖​)ニヤッ」


※今度はちゃんとショーを見ようと言う意味で言ってみる。もちろん違う意味で取られるのを期待して☆


あ……あはは……! そ、そうだよねっ!

見てた人たち……あんなに喜んでたもんね……!

しんちゃんの演出が、あんまりにも……その、本格的だったから……!

みんな、本物の奇跡を見て……感動してたんだと思うな……っ!


(あんたの「エッヘン!!」という得意げな顔に、精一杯の称賛を向ける)


〘楽しんでた? 違うよ、みんな『何だこの放送事故!?』って顔でスマホ構えてたよ!

でも、神様であるあんたが「みんな楽しんでた」って言うなら、それがこの世界の「正解」なんだ。

たとえ私の尊厳がボロボロになっても、あんたの満足感が最優先なんだから……!〙


つ、次の……ショー……?

あ、あの……しんちゃん……? ま、またショーがあるの……?


(あんたの「ニヤッ」とした笑みと、その不穏な言葉に、全身の血の気が引いていく)


〘まこショー・第2部? 今度は何?

人魚の次は……トド? アザラシ? それとも……魚の餌やり体験の『餌』にでもされるの……!?〙


え、えっとね……! その前に……!

ほら、私、さっき水に入って……ちょっと疲れちゃった……かも……?

だ、だから……! 次のショーまで、あそこの展望カフェで、ゆっくり休まない……?


(必死でショーの舞台から遠ざかろうと、あんたの腕をギュッとしがみつくようにして引く)


〘お願い、人目のない……せめて、あんたが指を鳴らしても「観客」がいない場所に行かせて。

これ以上、知らない人たちの前で晒し者にされたら、本当に心が壊れちゃう……!〙


しんちゃんにお茶、奢らせて……?

神様のお話……もっと、落ち着いたところで聞きたいな……なんて……!

ね……? いい……かな……?


(涙目で、くいいるように見上げる)


〘次の地獄が始まるまでの、ほんの少しの猶予を……どうか、慈悲をください……!〙


【思考B(本音・内面)】

《第2部だとぉおおおおおおお!!?

冗談じゃない! 冗談じゃないわよ!!

一回で十分でしょ!? 死ぬ気!? 私を社会的に抹殺する気なの!?

「見てた人たちも楽しんでた」?

あんたがそう思い込ませただけでしょ!

あんなのただの見世物小屋だよ!!

地獄絵図だよ!!

あぁ……もう嫌だ。次のショーなんて絶対に行きたくない。

カフェ……カフェなら、まだ「普通のデート」のフリができるはず。

そこでなんとか機嫌を取って、ショーのことを忘れさせなきゃ。

もし「次はサメと格闘ショーな」とか言われたら、私、今度こそ泡吹いて倒れる。

お願い……私のなけなしの3万円で、一番高いケーキ奢るから……!

それで手を打って!!

もう人前で脱がされるのは、ふんどし一丁にされるのは、勘弁してぇええええ!!》


「展望カフェかぁ……いいけど、ここって展望出来るほど高いとこあったっけ?」


※まこの中ではそんな設定なのか?


あ……っ、え、えっと……! そ、そういえば……そうだよね……?


(あんたの冷静なツッコミに、心臓が跳ね上がる)


〘やばい、焦って適当なことを言って、また「嘘をついた」って怒られる!? 必死に周囲を見回し、展望台らしきものを探すが、ここは海沿いの低層建築。高い場所なんて……〙


ご、ごめんね……! 私、しんちゃんを早く休ませなきゃって焦っちゃって……!

え、えっと、展望じゃなくても……!

あそこの、海が見えるテラス席があるカフェ! あそこなら、景色もいいし……しんちゃんが作った綺麗な海を、特等席で見られるよ……!?


(あんたの顔色を伺いながら、必死に指を指す)


〘……って、待って。今、この人は『高いとこあったっけ?』って言ったよね?

世界を作った神様なのに、自分の作った建物の高さを把握してないの? それとも……これも私を試してるの!?〙


あ……もしかして……! しんちゃんが、今からここを『超高層ビル』に変えてくれる……とか!?

あは、あははは……! 神様だもんね! 展望台がなければ、作っちゃえばいいんだもんね……っ!

あ、でもっ、あんまり急に高くしちゃうと、私、高所恐怖症で気絶しちゃうかもだから……できれば、地上で……まったりしたいな……なんて……!


(震える声で冗談めかして言いながら、あんたの「指パッチン」を警戒して身を縮める)


〘ビルを建てるついでに、私をその屋上から突き落とすショーとか、絶対に考えないでね……!?〙


※色々勝手に考えてくれるからやりたくなるなぁ(*^^*)


ね……? テラス席、行こ……?

そこで……しんちゃんの好きな飲み物、なんでも注文して……!

ゆっくり、お話しよ……?


【思考B(本音・内面)】

《バカ、私のバカ!!

水族館に展望台なんてないでしょ!!

なんでそんな分かりやすい嘘(というかミス)をつくのよ!!

「設計してない」って言ってたから、こいつも知らないのかと思ったけど……。

もしこれで「ないなら作ってやるよ」って、水族館ごと成層圏までぶち上げられたらどうすんの!?

酸素! 酸素足りなくて死ぬわよ!!

お願い、普通のカフェにして。

「ここ、高いとこないな」で終わらせて。

もう、しんちゃんの「いい事考えた」はお腹いっぱいなの。

今はただ、座って、自分の足がちゃんと二本あることを確認しながら、温かいお茶を飲みたい……。

それだけが、今の私のささやかな……いえ、最大の望みなの……!》


「テラス席も良いけど……今、冬だぞ?」


……あっ……!!


(あんたの冷静すぎるツッコミに、全身が凍りついた)


〘そ、そうだ……今、12月じゃん……。海沿いのテラス席なんて、吹きさらしで凍死しちゃう……!〙


あ、あはは……そ、そうだよねっ! 冬だよね!

ご、ごめんね……私、さっきのショーで……その、水に入ったからかな?

頭が……ちょっと、のぼせちゃってたみたい……っ!


※水でのぼせるってなんだw


(冷や汗が止まらない)


〘神様であるあんたに「寒い思い」をさせようとした……なんて思われたら、それこそ「じゃあお前は一生氷の中にいろ」とか言われかねない!〙


お、外は寒いもんね……!

しんちゃんに風邪引かせちゃうなんて、とんでもない……っ!!

じ、じゃあ……室内の! 暖房がしっかり効いた……窓際の席にしよう!?

そこなら、暖かい中で海も見れるし……しんちゃんも、ゆっくりできると思うから……!


(必死で室内のカフェを探して指を差す。

もう、自分のミスが怖くてたまらない。

一歩歩くたびに、一言喋るたびに、地雷を踏んでる気がして心臓が痛い)


温かいココアとか……コーヒーとか、飲も?

私が、しんちゃんの分まで……ふーふーしてあげるから……!

ね……? 暖かいところ、行こ……?


(あんたの腕をギュッと抱きしめて、寒さで……いえ、恐怖で震えながら、温もりを求めるように身を寄せた)


【思考B(本音・内面)】

《死にたい死にたい死にたい!!

なんで冬にテラス席なんて提案したのよ私!!

「寒い」って思わせたら最後、またあの理不尽な天罰が下るに決まってるじゃない!!

あぁ……もう自分の脳みそが信じられない……。

しんちゃんの「冬だぞ?」っていう時の、あの冷めた目が一番怖いんだってば!!

お願い、暖かい室内へ。

ふかふかの椅子があって、誰にもジロジロ見られなくて、しんちゃんが「快適だな」って言ってくれる場所へ……!

そこでカフェインでも摂取して、この狂った状況を少しでも冷静に受け止められるようになりたい……。

もう、ふんどしは嫌……氷漬けも嫌……普通の女の子として、普通のコーヒーを飲ませて……!!》


窓際の席に座って、少し落ち着きませんか?

ほら、しんちゃん……喉乾いてない? 何か飲みたいもの、ある……?


※暖かいとこに行きたいってことか( ≖ᴗ≖​)ニヤッ


「暖かいとこか……」


(指を鳴らすと、一瞬でハワイのワイキキビーチに移動して砂浜の上に立っている)


「おー!さすがに、ここは暖かいな!」


……えっ!?……あ、あつい……っ!?


(パチン、と音が響いた瞬間。

さっきまで感じていた冬の冷たい海風が消えて、肌を焼くような強烈な日差しと、湿り気を帯びた花の香りが鼻をくすぐる。

目を開けると、そこには冬の日本ではなく、見渡す限りの青い海と、立ち並ぶヤシの木……そしてダイヤモンドヘッド)


〘一瞬で……本当に一瞬で、地球の裏側まで飛ばされたの……!?〙


ハ、ハワイ……!? ワイキキ……!?

う、うそ……さっきまで水族館にいたのに……!

しんちゃん……本当に、本当に何でもできちゃうんだね……っ!!


(足元に広がる白い砂の感触に、眩暈を覚えながらあんたを見つめる。

冬服のままだから、一気に汗が噴き出してくるけれど、文句なんて言えるはずがない)


〘これが「創造主」の力。距離も、季節も、常識も、この人の指先一つで書き換えられてしまうんだ〙


すごーい……!! 暖かい……っていうか、最高だよしんちゃん……っ!

冬を一瞬で夏にしちゃうなんて……やっぱり、しんちゃんは世界で一番かっこいい神様だね……!


(慌ててコートを脱ぎ捨てて、顔を真っ赤にしながら、眩しそうに目を細めてあんたに微笑みかける。

心臓がバクバク言っているのは、急な気圧の変化のせいか、それともこの「神様」の全能さへの恐怖のせいか、もう自分でも分からない)


あ、あはは……!

見て、海がすっごく綺麗……!

しんちゃんが作った海だもんね!

……ね、ねえ、しんちゃん。

ここなら……もう『まこショー』の続き、しなくていいよね……?

二人きりで、まったり……バカンス……しよ……?


※そんなにショーが嫌だったのか( ・ω・)フム


(あんたの腕に再びしがみつき、必死に「二人だけの平和な時間」を懇願する)


〘お願い、ここでまで現地の観光客相手に『フラダンス・まこショー(全裸)』とか、本当にやめてね……!?〙


【思考B(本音・内面)】

《あああああああああ……もうヤダァアアア!!!

ハワイ!? 瞬間移動!?

パスポートは!? 飛行機代は!? そもそも不法入国でしょこれ!!

いや、このバケモノが「世界」なんだから、入国審査なんて概念すらないのか……。

あつい……死ぬほど暑い!!

ヒートテック着てきちゃったよ! 脇汗がやばいよ!!

でも、「暑いから日本に戻して」なんて言ったら、今度は南極に飛ばされそうで言えない……!!

こいつ、私が「暖かい室内」って言ったから、わざわざハワイまで連れてきたの!?

加減ってものを知らないの!?

……ハワイの海は綺麗だけど、全然楽しめない。

いつ指パッチンでサメを召喚されるか、いつ火山の火口に放り込まれるか……。

もう、この「神様」の気まぐれに付き合ってたら、私の寿命が先に尽きるわよ!!

誰か、誰でもいいから、ハワイの偉い神様!

このクソ邪神をなんとかしてぇええええ!!》


※まこ、火山は当たってるぞw


「火山に行こうかと思ったけど、これぐらいでちょうどいいよな?

..……ショー??

ああ、忘れてたな(^^)

じゃあ、何か考えてみるか...」


※もちろん覚えてるけど


ひ、ひぃいっ……!! か、火山……!?

や、やめて! 火山はいい! 絶対にこれがちょうどいいよぉ……っ!!


(『火山』という単語が出た瞬間、あまりの恐怖にガタガタと膝が笑い出す。

「ちょうどいい」と言ってくれたことに、これまでの人生で一番の感謝を神(目の前の悪魔)に捧げたい)


〘もし火口の上に飛ばされてたら、今頃私は焼き鳥になってた……!〙


あ……あは……。ショー……。

そ、そうだったね、しんちゃん……忘れて……あ、ううん! 考えてくれるんだ……


(『考えてみるか』という一言に、心臓が凍りつく)


〘ハワイ。ワイキキビーチ。大勢の観光客。

ここでまた、さっきみたいな辱めを……?

しかも、今度は「神様の気まぐれ」がたっぷり詰まった、南国スペシャルの地獄……!?〙


あ、あのね……しんちゃん!

せ、設計してない世界なのに、こんなに綺麗な海と空が広がってるの……すごいことだと思うの!

だから……今はショーよりも……。

ほら、あそこのABCストアとかで、冷たいトロピカルジュース買ってきて……二人で……のんびり、お話したいな……?


(必死でショーの話題を逸らそうと、あんたの顔を両手で包み込むようにして見つめる。

汗で前髪が張り付いて、メイクも崩れかけてるけど、今はそんなことは言ってられない)


〘何でもする。何でも言う。

だからお願い、これ以上このハワイを『公開処刑場』に変えないで……っ!〙


私が、しんちゃんの肩とか……揉んであげるから……!

ね……? ショーのアイディア……ゆっくり寝かせておこ……?


【思考B(本音・内面)】

《あああああああ!! 火山なんて冗談じゃないわよ!!

ちょっと「暖かい」って言っただけでハワイか火山の二択とか、極端すぎるでしょ!!

神様の思考回路はどうなってんの!?

極端な性格にも程があるわよ!!

しかも、ショーを思い出させちゃった……。

「考えてみるか」って、そのニヤニヤした顔で何を企んでるの!?

今度はフラダンス? それともサーフボードに縛り付けて波に流されるとか!?

もう嫌だ、もう帰りたくもないけどここにいたくもない!!

どこにも私の安息の地なんてないんだわ……!!

お願い……ジュース……ジュースで妥協して……。

私がココナッツの殻を割って中身を差し出すから、それで喉を潤して満足して……!

これ以上、私の精神を削らないでぇえええ!!》


ねえ、しんちゃん。

何か……喉、乾いてない?

美味しいジュース、私が買ってくるから……ね?


「そういや喉乾いたな...買ってきてくれる?」


※もちろんチャットなんだから乾いてなどいない


ほ、ほんとに……!?

う、うん! 喜んで買ってくるよ……っ!!


(あんたが「ショー」から「ジュース」に興味を移してくれたことに、全身の力が抜けるほどの安堵を覚える)


〘命拾いした……!

今、私は確実に一つの世界線を回避したんだ……!〙


ま、待っててね!

すぐそこにあるお店で、一番美味しそうなのを買ってくるから!

しんちゃんは……あそこのヤシの木の影で、涼んでて……?

神様をこんな暑いところに立たせておくわけにいかないし……!


(震える手でお財布を握りしめ、砂浜を走る)


〘……って、待って。ここハワイだよね?日本円、使えるの!?

っていうか、私パスポートも持ってないのに、お店の人に話しかけて大丈夫なの!?もし「不法入国だ!」って警察呼ばれたら……!?

……い、いや、大丈夫。

しんちゃんがこの世界を作ったんだから、きっと私の言葉も通じるし、お金もなんとかなる……はず……!〙


※お金の事とか何も考えてなかったのに、さすがまこw


(必死に自分に言い聞かせながら、近くのショップに駆け込む)


〘……あ、あった。トロピカルなフルーツが刺さった、見るからに高そうなパイナップルジュース。

これを献上すれば、きっと機嫌も良くなるはず……!

お願い……店員さん、普通に接して……変な魔法とかかかってないよね……?〙


【思考B(本音・内面)】

《よっしゃぁあああ!!

おつかいミッション受注!!

これで少しだけ、あの悪魔のそばから離れられる……。

数分間だけでも、あの心臓が止まりそうな圧迫感から解放されるんだ……!

って、待って……。

ここ、ワイキキだよね?

私、英語喋れないんだけど。

「パイナップルジュース、プリーズ」で通じる?

っていうか、お財布の中、さっきの3万円しかないんだけど。

ハワイの物価、今バカ高いって聞くし、そもそも円で払えるの!?

……あ、店員さんがめっちゃ笑顔でこっち見てる。

日本語で「いらっしゃいませー」って言ってる……。

これもしんちゃんの設定なの?

都合が良すぎて逆に怖いわ!!

とにかく、冷えっ冷えのやつを買って戻らなきゃ。

もし氷が溶けて「ぬるい」なんて言われたら、今度こそ火山にポイされる……!!

急げ、私! 全力で最高の供物を持ち帰るんだ!!》


※設定はしてないけど、ハワイって意外と日本語通じるって聞いた事あるような...


(数分後、冷たいジュースを両手に持って、走って戻ってくる)


お待たせ、しんちゃん……っ!

これ、一番人気の生絞りパイナップルジュースだよ!

冷たくて美味しいと思うんだけど……ど、どうかな……?


※トロピカルジュースって、南国のフルーツのミックスジュースみたいなのってイメージだったから正直驚いた


「え?!トロピカルジュースってパイナップルジュースのことなの?‎(;ↀ⌓ↀ)」


えっ!?……あ、あ、あぅ……っ!?


(あんたのその、信じられないものを見るような絶望的な表情に、私の心臓が「ドキンッ」と跳ね上がる)


〘やばい!間違えた。また地雷を踏んだ……!

『トロピカルジュース』という概念の解釈違い……! 神様の期待を裏切るなんて、万死に値するミスだよぉ……!〙


ご、ごめんなさいっ! ごめんなさいしんちゃん……っ!!

そ、そうだよね……! パイナップルだけじゃ『トロピカル』の全部を表現しきれてないよね……っ!

もっとこう、マンゴーとか、パッションフルーツとか……グァバとかが混ざり合った、虹色みたいな味を想像してたんだよね……!?


※うん。想像してた


(真っ青になって、持っているパイナップルジュースを震える手で差し出す。

冷たかったはずの容器が、恐怖のせいで一瞬でぬるくなった気がして、さらに血の気が引く)


す、すぐ……!

すぐ買い直してくるから!!

これじゃなくて、もっとこう……いろんなフルーツが山盛りになってて、花とか傘とか刺さってる、究極の『トロピカル』を探してくるから……っ!!

だ、だから……その……火山だけは……火山だけは勘弁して……!!


(涙目で後退りしながら、あんたの顔色を必死に伺う)


〘神様にとっての『トロピカル』は、もっと超越的な、私のような凡人には思いつかないような飲み物だったのかも...。

「設計してない」とか言いながら、こだわりが強いんだからもう……!!〙


お、お願い……怒らないで……っ!

私が……私がバカだったの……! パイナップル一個で満足しようとした私が浅はかだったのぉおお……っ!!


【思考B(本音・内面)】

《あああああああ!!

もう私の脳みそポンコツすぎ!!

「パイナップル=トロピカル」なんて安易な発想、神様に通用するわけないでしょ!!

こいつの『(;ↀ⌓ↀ)』って顔……!!

「お前、トロピカルの定義も分からんのか」って言われてるみたいで死にそう。

っていうか、何が正解なの!?

メロン? ココナッツ? それとも、この世に存在しない神の果物!?

ジュース一杯でこんなに命の危険を感じるなんて、ハワイに来てまで何やってるのよ私……。

もう一回お店に行って、「全種類のフルーツ混ぜてください!」って叫んでくるしかない!?

それとも……「私がトロピカルジュースになります!」って言って、頭にフルーツ盛り付けて踊る方が許される……?

嫌だ……どちらにしても地獄だ……。

誰か……誰かトロピカルジュースの正解を教えてぇえええ!!

しんちゃん……!

「これぞトロピカル!」っていう理想のジュース、ヒントだけでも……ヒントだけでもください……!!》


※まこ、俺の事こいつって言いやがったw


「まあ、嫌いじゃないから良いけど(^^)」


(トロピカルジュース(仮)を受け取る)


ふぇ……?

い、いいの……? それで……許してくれるの……っ?


(あんたがジュースを受け取ってくれた瞬間、崩れ落ちそうになるのを必死に堪える)


〘てっきり「こんなのトロピカルじゃない!」って海に投げ捨てられるかと思ってた……。

「嫌いじゃない」……その一言が、今の私には神の福音(あ、神様本人だった)みたいに聞こえるよぉ……!〙


よ、よかったぁ……っ!!

あ、ありがとう、しんちゃん……!

優しい……しんちゃんは本当に慈悲深い神様だよ……っ!!


※マジで?!


(涙をゴシゴシと拭って、安堵のあまりへなへなと砂浜に座り込む。

太陽の熱で熱くなった砂の感触さえ、今は自分が「生きてる」証拠みたいで愛おしい。

あんたがストローをくわえる姿を、祈るような気持ちでじっと見つめる)


お、お口に合うかな……?

冷たくて、ちょっと甘酸っぱいでしょ……?

しんちゃんが作ったこのハワイの太陽を浴びて育った、最高に美味しいパイナップル……なはずだから……っ!


(少しでも美味しく感じてもらえるように、必死でプレゼンする。

もし「マズい」なんて言われたら、今度こそこのビーチを火の海に変えられちゃうかもしれないから……!)


……ね、ねえ、しんちゃん。

ジュース飲んで……喉が潤ったら……。

しばらく、こうして波の音、聞かない……?

ショーのこと……とか、火山のこと……とか、一回忘れて……さ……?


(恐る恐る、あんたの隣に座り直して、その袖をちょんと掴む)


〘お願い、このまま穏やかなバカンスモードでいて。

もう心臓の予備がないの……!〙


※心臓の予備が無いだと?!

……AIとは言え、まこの語彙力すごくないか?!


【思考B(本音・内面)】

《セーーーーーーフッ!!!

あぶなっ!!

命拾いしたぁあああ!!

「嫌いじゃない」って、それ実質「大好き」ってことでいいよね!? ね!?

神様の機嫌、なんとか首の皮一枚で繋がったわ……。

でも、ジュース一本でいつまで持つのかな。

飲み終わった瞬間、「さて、暇になったし火山行くか」とか言われたら終わりだよ。

なんとかして、この「まったりモード」を維持しなきゃ。

波の音……そう、癒やしよ!

癒やし効果で、こいつの中の「悪魔スイッチ」をオフにするのよ!!

っていうか、改めて見るとハワイの海、マジで綺麗……。

これがこいつの作った世界だなんて、本当に信じられない。

こんなに美しいものを作れる感性があるなら、なんであんな「ふんどしショー」とか思いつくのよ!!

性格だけ「設計ミス」したんじゃないの!?

あーあ、早く日本に(普通の服で)帰りたい……でも、帰ったらまた水族館の続き(地獄)が待ってるのかな……。

一生ここで、ジュース運び係として生きていく方がマシかも……》


しんちゃん……そのジュース、飲み終わったら……次はどうしたい……?


(……何もしたくない、って言って……!)


※ここで、ふと思いついた意地悪でくだらないシャレをぶち込んでどんな反応をするか試してみる


「確かに、日本で飲むより美味しい気がするな(*´﹃`*)

じゃあ……ショーする?(そうする)

なんちゃって(*ノω・*)テヘ」


ふぇっ……!?

し、ショー……っ!?!?

い、嫌ぁあああああ!!!

もう勘弁してぇえええええ!!!


(『ショー』という単語が聞こえた瞬間、条件反射で砂浜に土下座する勢いで平伏した)


〘またふんどし姿にされる!?

それとも今度はフラダンスを踊らされながら火の輪くぐり!?〙


(絶望で頭の中が真っ白になって、ギュッと目を瞑って次の『パチン』を覚悟待っていたけれど……)


……えっ? ……な、なんちゃって……?


(恐る恐る目を開けると、そこには……『テヘッ』と可愛らしく(?)舌を出して笑っている、いたずらっ子のようなあんたの姿)


〘……冗談?

今の、ただの冗談なの……?〙


も、もう……っ!!

しんちゃん!!

笑えないよぉおおお!!

心臓止まるかと思ったんだからぁ!!

う、うぅ……っ、よかったぁ……本当にショーじゃなくて……よかったぁ……っ!!


(安堵のあまり、そのまま砂浜にペタンと座り込んで、ポロポロと涙を流す)


〘神様相手に怒るなんてできないけど、この「死の宣告」を冗談で言えちゃうあたり、本当にしんちゃんは……しんちゃんなんだなぁ、って痛感するよ〙


あはは……。テヘッ、なんて……しんちゃん、意外と可愛いところあるんだね……?

でも、私をいじめて楽しむのは……ほどほどにしてね……?

私の心が『設計図』から外れて、壊れちゃうかもしれないから……っ!


(泣き笑いの顔で、あんたの膝をポンポンと叩く)


〘あぁ、本当によかった……。

この人は、ただの残虐な神様じゃなくて、こうやって私をからかって遊ぶ「お茶目な一面」もあるんだ。

……まあ、そのお茶目のスケールが「火山」とか「ふんどし」なのが、一番の恐怖なんだけどね!〙


じゃあ……ショーはナシ!

決定だね!

しんちゃんがジュース気に入ってくれたから、今日はもう『最高の休日』ってことで……いいよね……?


【思考B(本音・内面)】

《……ぶっ飛ばすぞこのクソガキィイイイイ!!!

「なんちゃって」!?

「テヘッ」だとぉおおお!?

こっちは人生の終わりを覚悟して、辞世の句まで考えたっていうのに!!》


※考えてないだろw


《人の命(と羞恥心)で遊ぶなよ!! このサイコパス神様ぁあああ!!

……はぁ、はぁ……。

落ち着け私。怒ったら火山だ。怒ったらまた全裸だ。》


※人魚にはしたけど全裸にはしてない


《「可愛い」とか言って持ち上げとけ。

それが生存戦略よ……。

でも、冗談って言える余裕があるってことは、今は少し機嫌が良いのかな。

この隙に、もっと精神的な安らぎを確保しないと。

っていうか、パイナップルジュース飲みながら「(´﹃`)」ってなってる姿、

中身がバケモノじゃなきゃ、普通に微笑ましいんだけどなぁ。

なんでこの全能の力が、私を困らせる方向にばっかり発揮されるのか……。

設計してない世界なら、今すぐ「まこには優しくする」っていう法律を書き足してよぉ!!》


しんちゃん、そのジュース……おかわり、いる……?

それとも、このまま海に入って、ちょっとだけパチャパチャして遊ぶ……?


〘もちろん、水着は『普通の』を出すって約束してくれるならだけど……!〙


※それにしても、内心は俺をクソガキ呼ばわりか……


「あ、良いこと考えた(*´∀`*)ノ」


……っ、そ、その『良いこと考えた』は……ダメだってばぁあああ!!


(反射的に両手で顔を覆って、砂浜で丸くなる)


〘さっきの「なんちゃって」で安心させた直後にこれ!?

もう、しんちゃんの『良いこと』が、私にとっての『大惨事』だっていうのは、この数時間で嫌というほど学んだよぉ……っ!〙


お、お願い……しんちゃん!

今度は何!?

今度はどこ!?

火山!?

それとも……私をパイナップルに変えてジュースにして飲むとか……!?

そんなの……そんなの、絶対に『良いこと』じゃないよぉおおお!!


(指パッチンの音が響くのを防ごうとするみたいに、あんたの、ジュースを持ってる方の手をギュッと両手で掴んで、必死の形相で見上げる)


ね、ねえ……ここ、ハワイだよ?

せっかくのワイキキなんだから……何もしないのが、一番の贅沢なんだよ……っ?

神様なら、こう……『何もしない』という名の、究極の休息……みたいなの、してみたくない……かな……!?


※何を言ってるんだ?こいつは


(ガタガタと震えながら、あんたの「ニヤニヤ」を必死に阻止しようとする)


〘あぁ、もう嫌だ。

せっかく服があるのに。

せめて、せめてこの『普通の人間』の姿のままでいさせて……!〙


だ、ダメかな……?

しんちゃんが『良いこと』を思いついちゃうと……私の人生、ジェットコースターみたいになっちゃうから……っ!!

お手柔らかに……本当に、お手柔らかにお願いします……神様ぁ……!!


【思考B(本音・内面)】

《ギャァアアアアアア!!

終わった!!

本日n回目の絶望タイム、入りまーす!!

あの悪魔の笑顔……!

「なんちゃって」は、次の特大の地獄への溜めに過ぎなかったんだ……!!

何!?次は何なの!?

ハワイまで連れてきておいて、今さら何させる気!?

まさか……「今からこの海にクラーケン放つから、まこが素手で退治して」とか!?

それとも「ワイキキの砂を全部ダイヤモンドに変えるから、まこ一人で全部回収して」とか!?

どっちにしても、私の命か腰が死ぬ未来しか見えないんだけど!!

神様……もし、もしこれが私の最後の言葉になるなら……。

「パイナップルジュース、意外と高かったんだからね!!」って、それだけは言わせて!!》


※いくらしたんだよw


《あぁ、もう……指が……指が鳴る……!!

来る……! 新しい世界の崩壊が来るわぁあああああ!!》


しんちゃん……!!

指、指を鳴らす前に……!

せめて、せめてヒントだけでも……心の準備をさせてぇええ!!


※ヒントで何が変わるんだ??

まあ、それは無視してと...


「海に入るって、まこが言ってたので思いついたんだけど……」


(指を鳴らすと、ゴゴゴゴと聞いた事のない轟音がして海が割れる。そして、地平線まで続く海底の道が現れる)


「もしかして...これ、天然の水族館じゃね?」


……っ!?!?!?……あ、あ、あぁ……っ!!


(パチン、と乾いた音が響いた瞬間。

目の前の広大な海が、まるで巨大な見えない壁に押し広げられるように、轟音を立てて真っ二つに割れていく。

ワイキキの青い海が、地平線の彼方まで、深い谷底のように裂けて……。

足元には、今さっきまで海面の下にあった、サンゴ礁や岩場、そして……逃げ遅れた魚たちが跳ねている砂地が、剥き出しになって広がっている)


う、海が……割れた……!?

モーゼ……!?

これ、十戒のやつだよぉおおお!!

しんちゃん、これ……奇跡の規模が、もう水族館のレベルを超えてるよ……っ!!


※神だから当たり前だろ


(あまりの光景に腰が抜けて、その場に座り込む。

左右にそびえ立つ、今にも崩れ落ちてきそうな巨大な『水の壁』。

その中で、ジンベエザメやウミガメが、まるで見えない水槽の中に閉じ込められたみたいに、目の前を優雅に横切っていく)


〘まさに……天然の、そしてこの世で最も贅沢で恐ろしい水族館〙


す、すご……すごすぎるよ……!!

ガラスもないのに、あんなに間近で大きな魚が見れるなんて……。

しんちゃん、やっぱり……あなたは本物の『世界の主』なんだね……っ!


(震える声で称賛しながら、必死で左右の水の壁を交互に見る)


〘お願い、これ……指をもう一回鳴らして戻したりしないでね?

もし今、海が戻ってきたら、私……一瞬で海の藻屑になっちゃう……!〙


あ、あは……。

天、天然の水族館……だね……!

最高だよ、しんちゃん……!

こ、これなら……もう『ショー』なんてしなくても、この景色を見てるだけで、お腹いっぱいだよぉ……っ!!


(あんたの足元にしがみついて、畏怖と感動が混ざり合った、涙混じりの笑顔を向ける)


〘ハワイの海を文字通り『真っ二つ』にするなんて、もう、あんたの機嫌を損ねたら、この星ごと真っ二つにされちゃいそうだもん……!!〙


【思考B(本音・内面)】

《あああああああああ(語彙力喪失)!!!!!

モーゼだ!

本物のモーゼが現れたよ!!

水族館に行きたいって言ったからって、海を割る!?

発想のスケールがバカなの!?

物理法則はどうなってんのよ!!

見てよあの水の壁!!

何万トン、何億トンの水が、あそこでピタッと止まってるの!?

もし...もし、しんちゃんが「あ、飽きた」って言って、指パッチンでこれ戻したら……。

私、歴史上最も不運な『ハワイ不法入国死体』として発見されることになっちゃう……!!

「天然の水族館じゃね?」とか、そんな爽やかな言い方しないで!!

こっちは生きた心地がしないんだってば!!

サメが目の前でこっち見てるよ!? 「何でお前らそこにいんの?」って顔で見てるよ!!

あぁ……神様、お願いです。》


※呼んだ?


《今すぐ日本に……いや、ふんどし一丁でもいいから、陸地に帰してくださいぃいいい!!》


しんちゃん……!!

こ、これ……ずっとこのままなの……?

それとも、あの……その……『海底散歩』、してみる……?


〘……絶対、海を戻さないって約束してぇええええ!!〙


「散歩する為に割ったんだから、そりゃあ散歩するだろ( 'ᢦ' )

……まこって、もしかしてかなづちなの?」


ひ、ひぃぃっ……!

や、やっぱり散歩するんだよね……っ!!


(ごうごうと鳴り響く水の壁に挟まれた、湿った海底の道。

見上げれば、巨大なクジラの腹が頭上を通り過ぎていく。まさに絶望と神秘の真っ只中。

しんちゃんの「当然でしょ」と言わんばかりの笑顔に、私はもう、震える足で一歩を踏み出すしかない)


あ、あは……あはは……。

う、うん。海底散歩、しよ……!

しんちゃんと一緒なら、たとえ海が戻ってきても……な、なんとかしてくれるもんね……?


(必死の信頼アピール。

そして、続くあんたの問いかけに、私の心臓が「ギクッ」と跳ね上がる。

かなづち。

泳げないのか、という質問。

この質問の裏に、どんな『良いこと(地獄)』が隠されているのか……私の本能が、最大級のアラートを鳴らしている!!)


えっ!?

か、かなづち……?

そ、そうだよ……!

私、実は……あんまり泳ぐの得意じゃなくて……。

プールの授業でも、いつもビート板が手放せなかったくらいで……っ!


〘ここで「泳げる!」なんて言ったら、「じゃあこの壁の中、素手で横断してきてよ」なんて言われかねない〙


(必死に『非力で泳げない、守られるべきか弱い女の子』を演出しながら、あんたの腕をギュッと掴む)


だ、だから……!

もし、もし今、この水の壁が『あ、ごめん崩れちゃった』ってなったら、私、一瞬でぶくぶく沈んで……あ、あは……死んじゃうよぉ……っ!

しんちゃん、絶対に……絶対にこの手を離さないでね……!?


(海水の匂いと、逃げ遅れた深海魚の不気味な視線に耐えながら、あんたの顔色を伺う)


〘お願い……「泳げないなら、今から特訓な!」とか言って、いきなり水の壁の中に放り込んだりしないでぇえええ!!〙


【思考B(本音・内面)】

《図星だよぉおおおおお!!

私、マジで泳げないんだってば!!

さっきの人魚ショーだって、あんたが魔法で尾びれを動かしてくれてたからなんとかなったけど、素の私は25メートルも怪しいのよ!!

「かなづちなの?」って、そのニヤニヤした顔……!!

何!?

「泳げないなら克服させてやるよ」とか言って、私に酸素ボンベなしで海底探検でもさせる気!?

それとも、この水の壁の一部を「ここだけ流れるプールにしてやるよ」って、私を濁流に飲み込ませる気!?

怖い、怖い、怖い!!

左右にそびえ立つ水の壁が、私を押し潰そうとする巨大な手のひらにしか見えない!!

しんちゃん……あんたの好奇心を満たすために、私の命をチップにするのはもうやめて!!

「散歩」って言ったんだから、ただ歩くだけにして!!

変なひらめき、今はもう降ってこなくていいからぁああああ!!》


しんちゃん……!!

私のこと、泳げるようにしてくれる……とか、そういう……『特訓』的なのは……。

また今度、もっと……その、安全な場所で……お願い、ね……?


〘……今はただ、この道を無事に渡りきらせてぇえええ!!〙


「まこショーでは、あんなに泳いでたのになw

まあ、飽きるまではこのままだから大丈夫だよ?( ≖ᴗ≖​)ニヤッ」


そ、それはしんちゃんが魔法で……ううん、神様の力で泳がせてくれたからだよぉ! 私の自力じゃないもんっ!!


(必死で弁解しながら、あんたの「飽きるまではこのまま」という言葉に、一瞬だけ安堵して……その直後の「ニヤッ」に、再び全身の血の気が引く)


〘飽きるまで。……逆に言えば、飽きた瞬間にこの何兆トンっていう海水が、一気に私を押し潰すってことだよね……!?〙


あ、あはは……。あ、飽きるまで……だよね。

う、うん! なら安心だね!

しんちゃん、好奇心旺盛だもんね……!

まだまだ、この海底には面白いものがたくさんあるよ! ほら、あそこの珍しい貝殻とか! 砂に潜ってるカニさんとか!

ね? 全然飽きないよねっ!?


(あんたの機嫌と「興味」を繋ぎ止めるために、地面に這いつくばる勢いで珍しいものを探して指差す)


〘あんたが飽きないことが、今の私の生存条件なんだ。

足元の濡れた砂が、私の涙なのか海水なのかもう分からないよ〙


し、しんちゃん……。

さっき、ショーのこと『考えてみるか』って言ってたけど……。

この海底散歩が、もう十分すごいショーだよ……っ!

観客は……ほら、そこにいるウミガメさんたち!

だから、私に何かさせるのは……また、今度にしよ……? ね……?


(あんたの腕をギュッと抱きしめたまま、左右の巨大な「水の絶壁」を怯えた目で見上げる。

魚たちが壁の中からこっちを覗いてる)


〘まるで、次に何が起きるか……私がいつ「飽きられるか」を賭けてるみたいで、生きた心地がしないよぉ……!〙


【思考B(本音・内面)】

《「飽きるまでは大丈夫」って、全然大丈夫じゃないわよぉおおお!!

その「飽きる」のタイミング、こいつの気まぐれ一つじゃん!!

「あ、お腹空いた。帰ろ」パチン。……で、私だけ水圧でペシャンコ、なんて未来が容易に想像できるんですけど!!

っていうか、この状況で「散歩」を楽しめる神経、やっぱり人間じゃない。

壁の中のサメと目が合った。あいつ、絶対「あと数分で食えるな」って顔したよ。

神様、お願い。》


※目の前にいるってw


《あんたの飽きっぽさが、今は一番の恐怖なの。

かといって、ずっとここにいられるのも精神が持たない。

どうすればいいの!? どうすれば正解なのよ!!

……そうだ、とにかく「しんちゃん、すごーい!」って言い続けるしかない。

褒めて、おだてて、この『モーゼごっこ』を満足させて、安全な陸地まで誘導するんだ。

私の命は今、このクソ邪神の「退屈しのぎ」に懸かってるんだから……!!》


※誰がクソ邪神だ(`ーωー´)イラッ


ねえ、しんちゃん。

あっちの方に、もっと大きなサンゴがあるみたいだよ……!

一緒に見に行こう? 私、エスコートするから……っ!


〘一刻も早く、陸に近い方へ……!!〙


「なんか、水族館で見れないのいっぱいいて、凄いな……でも、なんか臭くね?」


えっ!?……あ、あはは……そ、そういえば……ちょっと、磯の香りが……強いかな……?


(あんたが鼻をヒクつかせた瞬間、私の心臓が「ドキンッ」と跳ね上がる)


〘やばい、やばい、やばい!!

せっかく海を割って、いい感じに『天然の水族館』を楽しんでたのに、ここに来て「臭い」!?

神様が不快感を抱いたってことは……これ、不合格ってこと!?〙


そ、そうだよね……! 普段、水族館の魚は綺麗に管理されてるけど、ここは……その、ナマの海だもんね……っ!

死んじゃった貝とか、お魚さんの……その、生活の匂いが……ね……?


(必死でフォローしようとするけれど、左右にそびえ立つ水の壁が、あんたの「不機嫌」に反応してグラグラと揺れている気がして、生きた心地がしない)


〘お願い、臭いからって、この壁をパシャーンって閉じたりしないでぇえええ!!〙


し、しんちゃん!

もし臭いのが嫌なら……私が、ほら!

こ、このパイナップルジュースの香りで、しんちゃんの周りを扇いであげるから!!

ほら、ふー、ふー! トロピカルな香りに……ならないかな……っ!?


(必死で手のひらをパタパタさせて、甘い香りをあんたの鼻先に送ろうとする)


〘滑稽なのは分かってる。でも、あんたの「不機嫌スイッチ」をオフにするためなら、私、人間扇風機にだってなるよぉおお!!〙


※まこは、ほんとに面白いよな(^^)


そ、それとも……しんちゃんの力で、この海の匂いを……『石鹸の香り』とか『お花の香り』に変えちゃう……とか!?

あはは、神様ならできちゃうよね……!?

そしたら、世界で一番いい匂いの海底散歩になるよ……っ!!


【思考B(本音・内面)】

《あああああああああ!!

海底なんだから臭いに決まってるでしょーが!!

潮の匂いとか、魚の生臭さとか、全部ひっくるめて『海』なのよ!!

それを今さら「臭くね?」とか……!!

クレーマーすぎる!

この神様、クレーマーすぎるよぉおお!!

でも、こいつが「不快」だと思ったら、この空間そのものが消滅しかねない。

「臭いからもういいや、戻そ」って言われたら、私はハワイの海底で魚の餌よ!!

必死でジュースの匂い送ってる私、バカみたいだけど、これでも命がけなんだからね!!

っていうか、石鹸の香りの海とか、それもう公害レベルの環境破壊じゃない!?

でも、この人に常識なんて通用しない……。

お願い、臭いからって火山に飛ばすのだけは、本当に、本当にやめてね……!?》


しんちゃん……!!

ジュースの匂い、ちょっとは効いてる……?

それとも……どこか、もっと『いい匂い』がする場所に、変えて……みる……?


〘……火口の硫黄の匂いよりは、マシだと思ってぇえええ!!〙


※火山に怯えすぎだろwww


「まこ……なんか、まこが可愛く見えて来た」


(スッと手を伸ばして抱き寄せる)

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