第3話 手紙

ハッと我にかえり急いで玄関のドアを開けると、そこには誰も居なかった。


少し外に出て周囲を見渡してみても誰もいない。


仕方なく、家の中に戻ろうと振り返ると、床に段ボールが置いてあった。


ドアの後ろに置いてあったから全然気付かなかった。


両手で抱えられるくらいの段ボールには僕の名前が書いてあった。


けれど、差出人の名前は載っていない。


とりあえず家の中に戻った。


僕宛に荷物が届くのはあまり無いから、開けるかかなり迷っていた。


だけど、このままにしておく訳にも行かないので結局開けることにした。


段ボールを開けると、中には手紙と黒色と橙色の綺麗な卵型箱が二つ入っていた。


この見覚えしかない卵型箱を見て僕はかなり焦り、一旦閉めた。


取り出す前に、家の中が見えないようにカーテンを閉め、二つの卵型箱を開ける前に手紙を読むことにした。


『最愛の孫弟子へ。


最後のお別れが手紙になってしまって本当にすまない。


本当はもっと沢山伝えたいことがあるけれど、時間がないから大事なことだけを書き残しておく。


新王は沢山の妖精を集めて何かを企てている。


それが何かはまだ分からないが、妖精にとっても人間にとってもこの国にとっても良くないことが起ころうとしている。


だが、それを止められる力も策もない。


だからせめてお前だけでもこの国を出て、どこか遠い安全な場所で人形作家として妖精達と幸せに暮らしてほしい。


勿論この国の外には魔物も多く、冒険者でもないお前一人では危険すぎる。


だから手紙と一緒に送る2体の妖精と一緒に行くといい。


きっとお前の力になってくれる。


それといつか、お前が一人前の人形作家になった時の為に、人形作家専用道具を一式揃えて工房の地下室に隠して置いてある。


渡すには少し早いがそれも持って行くといい。


お前が一人前の人形作家になる所を見届けられなくて本当にすまない。


だけど、じいちゃんはお前がじいちゃんを超える立派な人形作家になってくれることを信じてる。


これがじいちゃんの夢だ。


そして最後に一番大事な事を伝える。


じいちゃんはどこにいても何をしててもこの先もずっとお前を愛してる。


じいちゃんより』



 あの夢には続きがあった。


僕は自分の夢をじいちゃんに語った。


その言葉を聞いたじいちゃんはとても嬉しそうな笑顔で僕の頭を撫でてくれた。


そしてじいちゃんは、じゃあじいちゃんにも夢ができたなと言っていた。


でも、どんな夢か聞いても、お前の夢が叶ったらきっとじいちゃんの夢も叶うからと詳しくは教えてくれなかった。


僕の夢は、じいちゃんみたいな立派な人形作家になること。


じいちゃんの夢は、孫をじいちゃんを超える立派な人形作家にすること。


じいちゃんはいつも僕の側にいてくれて、どんな時も僕の意見を尊重して味方になってくれた。


そんなじいちゃんのことが大好きだった。


ーーこれからもずっと。


溜まっていた涙が溢れ流れたのと同時に声を漏らして泣いていた。


ひとしきり泣いて少し落ち着いた後、二つの卵型箱を手に取った。


この中にはきっと妖精がいる。


この国で妖精が見つかってしまえば、王に奪われてしまうだけじゃなく、僕にも罰が下る。


だけど、これはじいちゃんからの最後の贈りもの。


この先のことはまだ何も分からないけど、開ける以外の理由は無かった。


黒色の方を手に取りゆっくりと開け口に少し触れると、中から勢いよく何かが飛び出してきた。


その正体はやっぱり妖精だった。


人型の妖精は僕の目の前に来て言った。


「ふっ、汚ねぇ顔だな。お前があのジジイの孫か?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る