第2話 現実
……そう、これは夢だった。
幸せだった時の夢から冷たい朝日に当てられ目覚めた僕は、重たい身体を起こした。
静まり返った家の中の空間をただじっと見つめていると、ここではなかった場所に引き込まれる。
最初は決まって楽しい日常。
なのにまた息が詰まる。
ほら、また遠くに立っている。
周囲を見渡し、何かを見つけ一点を見つめる。
口元が動く。
だけど、周囲の雑音で僕には何も届かない。
まだ何も届いてないのに冷たく光るそれが高く上がる。
動くことも許されない。
目を逸らすことも何も出来ない。
光の速さで振り下ろされたのと同時に雑音が悲鳴に変わった。
見えていた悲鳴や雑音が消えて、聞こえるはずのない落ちた音だけが聞こえたーー気がした。
呼び鈴が鳴る。
その音は次第に大きくなる。
音のない世界に久しく吐息が聞こえた。
ある日突然全てが変わってしまった。
一ヶ月前妖精が人を殺したとの報道が大々的に広まった。
元々妖精は、それぞれの結晶石に応じて属性が決まり、その属性に対応した魔法が使える。
火の結晶石なら火属性の魔法、水の結晶石なら水属性の魔法。
魔法にもそれぞれ階級があり、下級、中級、上級そして最上級の魔法が存在している。
上級、最上級魔法を使える妖精も限られている。
人形作家が作る人形、結晶石、妖精のバディとなる人間の能力値、その全てがAランク以上でなくてはならない。
その条件が満たされた妖精のみが上級や最上級魔法が使えるようになる。
当然、階級が高い魔法ほど妖精や人間にも危険が伴い、時に命を落としてしまう妖精や人間もいる。
けれど、それらは不慮の事故として大きな問題になることはほとんどない。
だけどここまで大きな問題に発展したのは命が
失われた人物とその内容にも原因があった。
命が失われた人物はこの国の王様。
そして、妖精が最上級魔法を使い故意的に王様を襲い殺したのだ。
それにより殺された王様の息子が新たな王になり、この国は大きく変わってしまった。
新たな王はすぐに動いた。
まずは、妖精のバディと人形を作った人物の捜索と捕虜。
そして、妖精を所持することを禁ずる法を新たに設立した。
勿論、国民は大反対をした。
デモを起こす人達も当然いた。
今や妖精と人間は共に生きるのが当たり前の生活で、妖精が居なければ生活も何も出来なくなる人が多くいたからだ。
それでも王は国民に聞く耳を持たず、無理やり妖精狩りを始めた。
王様を殺した妖精のバディは見つからなかったが、妖精を生み出した人物を見つけるのは早かった。
なぜなら、この国でAランク以上の人形を作れるのは、じいちゃんしかいなかったからだ。
そうしてじいちゃんは王に捕まり、捕虜の身となった。
多くの人や妖精に愛されてきたじいちゃんだったからこそ、そこで更に国民の反感を買ったが、それでも王は仇を取るべく強行突破に出た。
それが一週間前の出来事。
じいちゃんは数体の妖精と共に、国民の前で公開処刑された。
多くの国民が悲しみの声に溢れかえった。
それほど人々にとって、妖精にとって、そして何より僕にとってじいちゃんは大切な存在だった。
僕の大切なものが全て失われたあの日から一週間が経っていた。
今の僕にとって今日見た夢は、現実での僕を更に追い詰める絶望でしかなかった。
あのまま夢から覚めなければよかったのに、そう何度思っても願っても、独りの世界に連れ戻されてしまう。
この瞬間が嫌いだ。
何も音が聞こえない。
見たくない知りたくない。
なのに、見えるもの全てが見えないものを映して、それを突き刺してくる。
探す必要なんてない。
ーー希望も。
それなのに、何かの間違いだったのかもと希望を持たそうと苦しめてくる。
おかしくなったんだ。
僕が二人いるみたいだ。
どちらの僕が本当なのか。
きっと、そのどちらも間違いで僕の全てを否定するかの様に、お店の入り口に黄色と黒のテープがバツを作っていた。
真っ暗にすれば、大好きな声が聞こえてくる。
ならもういっそずっとこのまま暗闇の中にいたいよ。
ーー会いたいよ、じいちゃん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます