妖精の星 auctorアウクトール

ミミ

第1話 夢

小さい頃、僕には大好きな絵本があった。いつも寝る前にじいちゃんがその絵本を読んでくれていた。

 絵本のタイトルは『妖精の星』


 僕は、夢を見ていた。

 それはいつもと変わらない日常だった。暖かい朝日を浴びながら起きて、朝ごはんを準備していると玄関にお馴染みの牛乳とパンが届く。朝ごはんが出来たら、工房にいるじいちゃんを呼ぶ。それから一緒に朝ごはんを食べて、今度は一緒に工房に行って、じいちゃんから人形ドールの作り方を教わる。

じいちゃんは人形作家アウクトールと言われる職人で僕はその見習い。僕は見習いとして3年経ってつい最近1体目を完成させた。一見遅く感じるかもしれないけれど、これでも僕の成長は早い方なのだ。人形作家見習いが最初の1体を完成させるのに、5年から長くて10年はかかるらしい。人形作家になるには、最低でも5体の人形を完成させ、妖精にする必要がある。人形を妖精にするには、神の加護と言われる結晶石を人形の中に埋め、最後の手入れをして人形に命が宿り妖精が産まれる。

その大変さ故に人形作家は年々減りつつあるのと、昔ある冒険者アウダクスが一生遊んで暮らせるくらいのお宝を見つけたと大きな話題となり、その影響で冒険者を目指す人が多くなったこともあり、半年から1年そこらでなれる冒険者とは違って何年何十年と時間と労力をかけないとなれない人形作家は、いくら需要があっても目指す人が少ないのだ。それでも「僕はいつかじいちゃんみたいな立派な人形作家になるのが夢なんだ」とじいちゃんに笑顔で言った。

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