第9話 深層ダンジョン・反射の迷宮
遠藤紘一は、街の外れに出現した深層ダンジョン「反射の迷宮」の前に立っていた。ここは、光や音、床や壁の反射を利用したトラップが無数に仕掛けられ、反射神経と瞬時の判断力が試される場所だという。探索者としての経験を最大限に試される――まさに上級者向けのダンジョンだ。
「……よし、行くで」
紘一は懐中電灯を手に取り、深呼吸して入口をくぐる。内部は薄暗く、床や壁の材質が微妙に歪んで光を反射する。歩くたびに光が揺れ、視界が混乱する。普段の街ではありえない錯覚が連続し、冷静さを失えばすぐに致命的なミスにつながる。
最初の通路には、小型モンスターが潜んでいた。金属製の盾や武器を持ち、光の反射を利用して遠距離攻撃を仕掛けてくる。紘一は光の角度と距離を計算し、素早く回避しながら反撃。社畜時代、限られた時間と資料の中で瞬時に優先順位を判断した経験が、ここで役立つ。
「落ち着け……焦ったら反射に飲まれる」
奥に進むにつれ、床が鏡のように光り、通路が複数に分かれたように見える。目に見えるものが本物か幻か、瞬時に判断する必要がある。紘一は視覚情報だけに頼らず、耳や振動、床の感触から正しいルートを判断する。
途中、巨大モンスターが出現した。体全体が鏡のように光り、攻撃の軌道を予測しづらい。通常の攻撃はすべて跳ね返される可能性があるため、紘一は直接戦うのではなく、反射を利用して罠に誘導する戦術を取る。
「角度……タイミング……よし、行け!」
懐中電灯の光と、床に映る影を巧みに利用し、モンスターの動きを封じる。攻撃を避けながら反撃することで、最小の消耗で敵を倒すことに成功する。反射神経と判断力、戦術的思考が融合した瞬間だった。
迷宮の中心部に進むと、複雑に折り重なる通路と光の反射が迷路を形成していた。どのルートも一瞬の判断ミスで行き止まりや罠に直結する。紘一は一歩一歩慎重に進み、反射の角度とモンスターの位置を計算しながら通路を選ぶ。
「よし……これで最後や」
最深部に到達すると、光を放つオブジェクトが浮かんでいた。触れると、紘一の反射神経と判断力が飛躍的に向上する感覚が全身に広がる。深層ダンジョン「反射の迷宮」は、戦闘力だけでなく、観察力、瞬時の判断力、反射神経を試す試練だったのだ。
出口に戻ると、夜明けの光が街を照らしていた。紘一は深呼吸をし、肩の力を抜く。無限のトラップと幻覚を乗り越えた達成感が胸に満ちる。
「……これで、俺もかなり強なったな」
深層ダンジョンを生き抜いたことで、紘一は自分の成長を実感する。自由を手に入れた探索者としての旅は、戦闘力だけでなく知力と判断力も試される冒険の連続だ。
「さあ、次はいよいよ……新たな冒険の幕開けや」
光と影の迷宮を抜け、遠藤紘一は次のダンジョンへ歩を進めた。反射の迷宮で培った力は、これから訪れる試練に必ず活きる――探索者としての旅は、まだ終わらないのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます