エピローグ 「その木、彼らと出会う」
——はるか昔、大陸は氷に覆われていた。
氷はその地を支配し、そこで暮らす生物達を、人々を苦しめ続けた。
ある時、一人の少年が立ち上がった。
少年は、氷に苦しむ人々を、自分の仲間達を、この大陸に暮らす全ての人々を救うために、立ち上がった。
少年は仲間達と共に、一体の怪物と戦った。
大陸を氷で包んだ元凶、最上位魔獣の一角——『
計り知れない犠牲の上に、少年は『寒冷の魔獣』を封印することに成功した。
やがて大陸の氷は溶け出し、白銀だった大地に緑が現れた。
人々は氷の苦しみから解放され、それをもたらしたこの少年を讃えた。
少年とその仲間達は、一つの国を作った。
二度とこのような災害を引き起こさないよう、『寒冷の魔獣』の封印が解かれることのないように、大きな大きな国を作った。
やがて少年はその地で家族を持ち、妻や子ども、仲間達と共に、最後まで幸せに暮らした。
少年が死ぬと、人々は彼の功績を讃えた記念碑をいくつも作った。
人々は彼の功績を、永遠に伝えていきたいと思っていた。
そうして果てしない時が流れ、大陸は大きく変わった。
人々は少年のことなど忘れ、歴史書や肖像画で名前や顔を見る程度の存在となっていた。
人々はいくつもの国を作り、そのいくつか滅ぶこともあったが、少年が作った国だけは、いつまでも大陸最強の国として残り続けた。
——少年によって封印された『寒冷の魔獣』は、その地にとどまり続けた。
魔獣は自身が何者であるかも忘れ、やがてその意識を封印された姿へと塗り替えた。
魔獣は『木』となり、そこで出会った特定の少年少女に、『呪い』をかけ続けた。
自身の気配、その一部を付与する呪い——
——その『呪い』を受けた者は、人々に『勇者』と呼ばれた。
その木、勇者に転生す。——亡き彼想う、少女ら惑う—— 富士月愛渡 @aito24moon
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