第2話 四姑集(しこしゅう)
淑雪の足は勝手に住持室に向かっていた。
暗い考えが次々湧いて止まらない。
「いっそのこと
ふと明るい空を見上げた淑雪は呪詛のようにつぶやいた。
「この世に居場所がないなんて。この世が間違っている。
彼女は考えるのを止めて、住持室の扉を叩いた。先に管理総監の黄沁華と金庫管理を勤める陳三娘が来ていた。
黄沁華は痩躯にもかかわらず、凄まじい筋力を道衣の下に隠している。
金庫番の陳三娘は巧娘の信頼が篤い。子供の頃から天姑小観で育ち、本気で登仙を目指しているという変り種だ。
二人は慣れた様子で杜巧娘に進言する。
「いつものように蔡知堂が一服盛れば問題なし。薬の量を計らせたら天姑観の
「こたびの標的の歳は十六か十七、辰の刻頃に来て思い詰めた顔で『静かな場所で瞑想したい』というから奥の
淑雪は無言で誰とも視線を合わさないでいた。
杜巧娘の薄い唇が少し歪んでいた。
「あの女の衣はお屋敷のお仕着せじゃない。かといって上等でもなし。アタシの勘が引っかかるんだ。もし城内の
淑雪から返事がなかった。杜功娘はバンと机を叩いた。淑雪の肩がピクリとする。
「蔡知堂、しっかりやりな。しくじったら、罰は私の
黄芳華と陳三娘が「うひひ」と下卑た笑みを投げてよこした。
淑雪が部屋を出たあと、黄沁華が言った。
「蔡知堂はそろそろお役御免にしてはどうです。この仕事に向いてません。あの顔を見ましたか、城内に駆けこんで
杜巧娘は全く気にしない。
「お役所に直訴? ははっ、
「夏児ですが」
「あの子を人質にすればいいさ」
淑雪は
「杜巧娘の閨に入るくらいなら死んだ方がマシだわ。砒素を使えば簡単よ……簡単に
いいえ、死ぬのは怖い、怖いわ。私はまだ生きたい。罪を犯しているこの身でも、生きていたい」
石灰吟の娘たち セオリンゴ @09eiraku
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