卵おじさん

もりくぼの小隊

卵おじさんの目玉焼き


 私の名前は「次三田孫雄つぎみたまごお」普通のサラリーマンだ。人に私は「卵おじさん」と呼ばれたい程に卵好きである。


 それはそれとして、朝ごはんである。今日のメニューは卵料理のシンプル・イズ・ザ・ベストのひとつ「目玉焼き」である。目玉焼きの美味しい作り方は色々とあるが、私的には温めたフライパンにサラダ油を引いて直接割り入れて蓋をして少し蒸すのが美味いと思っている。それは違うとウンチクを語りたがる輩も多いが私にとっての最高に美味い目玉焼きはこれなのだ。邪魔をしないで貰おうか。


 さて、出来上がった目玉焼きは何と合わせるべきか、ご飯に味噌汁の和食王道、トーストに牛乳の洋食王道とあるが、今日の私は味噌汁を作ってはいない。インスタントの買い置きもない。ならば、王道は洋以外の選択肢は無い。というか、既にトースターに食パンをチンでトーストは出来ている。トーストの上に目玉焼きを合わせれば、目玉焼きトーストの完成だ。


 ちなみに私は目玉焼きトーストにはソースである。食べ方によって好みは変える。目玉焼きには〇〇派などという派閥争いに参戦するつもりは無い。目玉焼きの様々なポテンシャルを引き出す可能性を狭めるのは卵好きとして愚の骨頂である。ぁ、これは私の意見なので君達は好きな食べ方を頑固に貫き通してくれたまえ、それもまた愛ではあるのだから。


 さて、語っているとせっかくの目玉焼きトーストが冷めてしまういただくとしようじゃないか。


 ザクリと一口――美味んまい、黄身に到達しないギリギリの白身とソースの味わいが堪らん。この混じり合わぬ卵のタンパクさを味わえるのも目玉焼きトーストの醍醐味だな。


 続けて二口目――黄身の濃厚さがまた更にたまらない、半熟トロッと零れ落ちそうな黄身を逃さない様に器用に食べるのはある種の戦いだな。


 後は夢中に食べまくり、あっという間に完食だ。今日も卵がいい仕事をしてくれたな。満足感が強い朝食だった……だったのだが、何か物足りなさを感じる。何が、物足りないのか――ハッ、コップが空ではないか、しまった。目玉焼きトーストの美味さに夢中になりすぎてお供の牛乳を忘れていた。食後に飲む牛乳と食事の合間に挟み込む牛乳はまた違うんだよ、今日の私は合間に挟み込む牛乳な気分だったのだ。


 牛乳という目玉焼きトーストの相棒を忘れてしまった私の乾杯――いや、完敗だ。もはや今朝の私に卵を語る資格はない。このまま己に反省を促しながら出社する事にする。


 それでは、いってきます。

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2025年12月26日 12:00

卵おじさん もりくぼの小隊 @rasu-toru

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