第2話 1層
3人分のダンジョンカードを作り、初心者セットを購入。装備したカグたちは、早速ダンジョンカードを機械に読み込ませて、ダンジョンの中へと1歩踏み出した。
「「「せ〜のっ!!」」」
ダンジョンへの第1歩は、3人同時にと決めていた。しかし──タイミングがズレたのか、カグだけが早めに1歩踏み込んでしまう。
「あ──ヤベ。うわぁ!?」
「ちょ──ま」
「あららっ」
二人三脚ならぬ三人三脚で肩を組んでいたカグたちは、タイミングがズレたことによりバラバラに着地。
しかし、体制を崩したカグは先に倒れ、覆い被さるように真鍋と鰹節が転倒する。
「重──」
「グッ、真鍋! はよ退けろよ──押しつぶされるって!」
「あぁ! すまぬお二人とも!」
体重100キロの真鍋は、焦った様子で急いで立ち上がる。
「あぁ~死ぬかと思ったぜ。ダンジョンでの死が、モンスターとかじゃなくて真鍋の体重圧死とかになったら最悪だったよ」
安堵の表情を浮かべた鰹節は、その場に座り込んで、おでこの汗をぬぐう。
「うぅ──誠にすまぬぅ。しかし、普段とは……体の動きが違うと言いますか、何でしょうかこの感覚」
「真鍋の言いたい事、分かるかも知れない。ダンジョンに入った瞬間、明らかに身体能力が変わった。そのせいで第1歩の踏み込みが速くなって転んだんだ。鰹節は分かるか?」
「えぇ? まぁ……そう言われてみれば、確かに変わってるかもな」
正直信じられないが、今まさに身体で体験している。ダンジョンへ潜った事で、ステータスが自身へ付与されたんだと。
「なぁカグ。自分のステータスって、どうやって見るんだ?」
鰹節からの疑問。それについて俺は2人が居ないときに受付のお姉さんに聞いて知っていた。
「その方法はだな、ダンジョンカードに親指をつけると、指紋認証によってレベルやステータスを表示してくれるんだ。ほら……俺のステータスがスクリーンみたいに空中で表示されただろ?」
「ほんとだ、あれ? 名前とかの個人情報は見れないんだな」
「指紋認証だけで見れるから、セキュリティは少し下がる。だから、個人情報は見えなくして、ステータスとかだけにしているらしい」
「ふ~ん、詳しいんだな。何で知ってるんだ……まさか」
あ──そういや、コイツ受付のお姉さんにベタ惚れしてるんだった。
「あ〜いや……あはは」
「成る程そういうことかよ、お前受付の美人なお姉さんに聞いたんだな? おめっーて奴は、いつもちゃっかり俺を出し抜きやがってぇ」
「す、すまん」
嫉妬まみれの鰹節に攻め寄られるカグは、両手を前に出し、落ち着けとジェスチャーする。
「ま、まぁ気を取り直してステータスを見ようぜ──な?」
「ったく、しゃーねぇな」
俺は再びカードに親指をつけ、ステータスを表示させる。
────────────────────
役職 アタッカー
Lv1
ATK(攻撃力) 10
DEF(防御力) 6
VIT(生命力) 7
RES(抵抗力) 5
DEX(命中率) 3
AGI(反応速度) 12
MAT(魔法力) 2
LUK(運) 8
スキル なし
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このステータスが、現実世界の身体能力や反射神経、肉体の耐久力やパワーにプラスされるのか。率直な感想としてこういうの凄く良いと思った。
「生命力とか、抵抗力ってどういう意味なんだ?」
「生命力は、VIT《バイタリティ》って言って、例えば大怪我とか火傷した時ってめちゃくちゃ痛いし動けないし苦しいだろ?」
「まぁな」
「簡単にいえば、数値が高ければ高いほど、それに長く耐えられるようになって動けるんだ、ゴキブリ並みの生命力ってやつだな。RES《レジスト》は催眠とか毒とかの状態異常への抵抗力が強まって耐性がつくようになる」
序盤の敵には、状態異常を付与してくるモンスターは居ないから今は必要無いステータスかもな。
「とりあえず、戦ってみて体験した方が早いだろ。奥に進もうぜ」
情報によると、1層から数層までは、スライムとかゴブリンとかの低級モンスターしかいないらしい。
今の俺たちでも十分に倒せるようだ。
「驚きました、もっとデコボコした道だったり、迷路みたいに分かりにくいかと思いましたが、かなり整備されているんですね」
「1層とかは誰でも入れるところだからな。松明とか監視カメラを設置して、すぐに助けられるようになってるみたいだ」
ここらへんは、巨体の真鍋が4人横並びで歩いても大丈夫な程広い。
ただ……かれこれ10分は練り歩いているが、モンスターの一匹も出会わないな。
「あ〜こりゃつまんねぇなぁ。他の奴らが全部狩り尽くしちまってるから、全く気配無いし、もう次の2層行こうぜ」
「モンスターがリスポーンするのは12時間後だ。今は午後6時だし、学校終わりに来たのは失敗だったな」
「それ。早くこの剣と盾でモンスターとやり合いたいぜ」
鰹節は、バランサーの初心者セットの使用していて、片手で持てる剣と盾、そして苦無などの飛び道具を所持している。
サブアタッカーやタンク、アーチャーなどの他の役職を混ぜあせたような役職で、代わりになれるようになっている。
バランサーは、他役職のサポートやサブとして機能する万能役職だ。
ちなみに、ステータスやスキルは最初に選んだ役職に合うように成長し、アタッカーだったらATKやAGI《アジリティ》などが最も成長しやすい。
2層へと向かう道中、松明が無いエリアをカグたちは見つける。
そこは、今までの明るい道中とは違い、不気味な雰囲気が漂っていた。
「ここだけ、みょーに暗いな」
「このエリアだけ松明が設置されていないみたいだ。ここ以外は全部松明があったのに……」
「あ──あそこに! 誰か倒れていますよ!」
真鍋が、奥にいる影を凝視して見つけたようだ。
カグはその影に歩み寄り、倒れている何かを見つめる。
子供か……? 暗くてよく見えないな。
「すまん鰹節。近くにある松明を剥がして、持ってきてくれないか?」
「おう分かった」
「なんだか……異様な雰囲気ですね」
「だな……1層なのに」
「持ってきたぞ! ほら松明だ」
俺は鰹節から松明を受け取り、再びその影へと近づき、松明で照らす。
照らされ見えた物体、緑色の肌に歪な形の顔。その見た目はモンスターだ。
「ぅ──! 離れろ! これはゴブリンだ!」
モンスターに気づいたカグは2人に伝わるように大声をだし、素早く後ろに飛んだ。
横になっていたゴブリンは寝ていたが、カグの大声によって目を覚ました。
「ケケケ──」
邪悪な笑い声と醜悪な顔。それはカグに冷や汗をかかせる。
「よっしゃ! ようやく俺の出番が来やがったな! この剣でぶった斬ってやる!」
鰹節が、片手剣のグリップを強く握り前へと出る。
いや──ダメだ。
「待て──鰹節! 行くな!」
俺は先より、大声で鰹節に伝える。
「なんでだよカグ。相手はゴブリン、しかも一匹だぜ? あ、もしかしてビビってんのか?」
「いや──違う。最初に気づくべきだったんだ」
カグは冷や汗をかきながら、鰹節と真鍋に現状を教える。
何故、このエリアに松明が無かった?
1層は全て整備され監視カメラもある。そんな中、現れた松明が無い異質なエリア。
協会が気づかなかったという線も、考えられなくは無いが──いや、あり得ない。
エリアも増え、敵も強くなってくる10層以上なら理解出来るが、ここは1層だぞ。
つまり、このエリアは存在が知られなかったって事だ。
特定の場所を押すことで発現する、特殊なエリアなら知られていなくてもおかしくない。
「いいか、よく聞け。ここは、このエリアは──トラップエリアだ」
そうカグが告げた瞬間、奥から大量の影が現れる。
近づいてきた、それらは──大量のゴブリンだった。
「何だよこの量!?」
「おおよそ10匹はいますね……」
マズイぞ、計10匹いるなんて。こんなの対処しきれない。
逃げなきゃ──。
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