ソロダンジョン〜100層までソロ攻略〜

ゆりゅ

1層から50層、死闘の日々。

第1話 ダンジョンへ行こう!

「みんなでダンジョンへ行こう!」

 自信高らかにそう告げた少年は、親友の真鍋まなべ鰹節かつぶしに歩み寄る。

「急にどうしたんだよ、カグ」

「そうだぞ! ダンジョンなんてまた突拍子もない事言ってさぁ」

 目を輝かせているカグに対して、親友2人は興味がなさそうだ。

「おいおい何だよお前ら〜夢がねぇなぁ。知ってるだろ? ダンジョン100層を攻略したら、どんな夢でも叶えられるって──」

「アホか!? 俺たち如きに攻略なんて出来るわけ無いだろ! なぁ真鍋?」

「うむ」

「いやいや……イケるって! 真鍋は体デカイんだし『タンク』とか丁度いいだろ。それに鰹節は運動神経だけは良いから、何でも出来る『バランサー』とか良いんじゃないか?」

「タンクとバランサーって……『アタッカー』いなきゃ戦えないだろ?」

 鰹節が不思議そうに聞いて来たが、待ってました言わんばかりにカグは答える。

「それなら問題ない、アタッカーは──俺だからな!!」 

「「は? 無理だろ」」

「ひどくね」

 息のあった罵倒に心をえぐられながらも、カグはアタッカーとして進む事を固く決意する。 

「ダンジョンに行っても、装備がないから厳しくなくか? 俺たちは全員レベル1から始まるんだし、素の力とほぼ同じだぞ」

「チッチッチ──鰹節がそういうと思ってたんだ……だからじゃじゃ~ん!」

 ポケットからクシャクシャのチラシを取り出したカグは、それを広げ2人に見せる。

「『今ならお得! 初心者応援キャンペーン』──?」

「それぞれの役割にあった装備や搦手を、格安で売ってくれるんだよ! 凄いだろ!」


 アタッカー、4500円。

 タンク、5000円。

 ヒーラー、2500円

 バランサー、4000円。

 サポーター、6000円。

 値段にバラつきはあるものの、それぞれの役職にあった装備や搦手をくれるのが、チラシに書いてある初心者セットだ。

「確かに盾と槍が格安で手に入りますが、5000円は手が出しづらい金額ですな……」

「4000円かぁ〜中3の俺たちには結構痛いな……」

「フッフッフッ、そこで朗報! なんと、お前たちの分の初心者セット──俺が奢ってやるよ!」

「良いのかよ!?」

「でも悪いですよ……」

「良いんだよ! ダンジョンは道中にモンスターが現れる。そいつらを倒すことでも微量だがお金や装備が貰えるんだ。だから、それで稼ごうぜ!」

 遠慮する2人を押し切ったカグは、早速放課後にダンジョン協会にあるショップへと訪れる。



「すみませーん。このチラシに書いてある初心者セットをアタッカー、タンク、バランサーの3点購入したいんですけど、いけますか?」

「かしこまりました。それでは皆さんのダンジョンカードのご提示が必要になりますのでご理解の程、よろしくお願い致します」

 美人なお姉さんの丁寧な接客。3人とも見惚れているが、1つの問題に気づかない。

 

 ダンジョンカード……なんだそりゃ。


「鰹節氏……ダンジョンカードって持ってます?」

「持ってねぇな……そもそも、ダンジョンカードって何だよ」


 後ろでコソコソ話す2人と言葉に詰まり声が出せないカグ。

 そんな3人の状況に気がついたのか、受付の美人お姉さんは、慣れた口でカグたちに伝えてくれる。


「お持ちでないようでしたので、説明させていただきます。ダンジョンカードは、ダンジョンに潜る為の切符及び、ダンジョン冒険者である証明が出来ます。ダンジョンに潜る際には専用の機械に読み込ませてから入る事ができ、それ以外での入場は認められていません。また、ダンジョンカードには氏名などの基本的な個人情報、レベルとステータス、スキルなどが表示されますので、パスワードを設定していただくと身分証明として機能します」

 

 へぇ、ダンジョンに潜る為には必須というわけだな。それに個人情報とステータスも分かるのか、だがどういう仕組みなんだ?


「あ、あのお姉さん──お、俺、鰹節マナトって言いますっ! えと、質問宜しいでしょうか!?」

 足にピッタリ両手をくっつけている鰹節。その姿を見て、カグは思い出す。

 そういやコイツ、いつもの勇ましい態度とは裏腹に、女性の前だと、口下手になってキョドるんだよな。うん、正直キモい。


「はい、大丈夫ですよ」

「あぁ~えと、そのダンジョンカードを無くした場合ってどうなるん……すかね?」 

「はい、ダンジョンカードが紛失・盗難した場合には協会のほうで効力を無くし、ダンジョンに一時的に入れなくなります。ですが、パスワードを突破されない限り、個人情報などを知られる事は無いので、そこはご安心ください」

「あ……ありがとう、ございます」


 何か言いたげな鰹節に対し、カグもまた質問をする。


「俺からもダンジョンについて質問します。ダンジョンは何故、この街に出現したんですか? そして、レベルを上げるとダンジョンの中だけは身体能力や反射神経が向上する事も謎です」


「異世界、ダンジョンは非科学的な特殊空間と科学者の間で言われています。現実の物理法則や公式が通用しない──未知数の領域。しかし、ダンジョンは間違い無く存在して、私たち人間に影響を与えています。モンスターを倒して、レベル上げ……まるでゲームの世界が現実にやって来たんだと言う人もおっしゃいます。結論を申し上げますと、分からないが答えになってしまいます」


 1年前に突如として現れたダンジョン。1つの街は完全に消滅して、ダンジョンだけが残った。それは、絶望を与えると同時に、多くの希望も芽生えた。


 モンスターを倒せば、微量のお金が貰える。ドロップした素材や装備は攻略を快適にでき、売れば高値で買い取ってくれる。

 お金を稼ぎたい者にとって、これ以上無い稼ぎ場所。

 モンスターと戦い、倒す。そしてレベルアップして新たなモンスターと戦闘する。

 ゲーム好きなオタクや思春期の中高生に加え、社会人のストレス発散にもなる。

 ダンジョンは、人類の生活を大きく変えると同時に様々な影響を与えた。それは、良い影響も悪い影響も──。


 カグは、このダンジョンへ潜り──地獄を見ることをまだ知らない。

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