覚書三

 昨夜、夢を見た。


 巨大な殻の前に立っていた。見上げても、頂点が見えなかった。手を伸ばして、触れようとした。指先が殻に届く直前に、殻は消えた。消えたのではない。最初からなかったのだと、夢の中で理解した。


 わたしは、なかったものに触れようとしていた。


 目が覚めたとき、指先がまだ伸びていた。何もない空中に向かって。


 これは、注釈官の記録に書くべきことではない。だが、書かずにはいられなかった。

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