氷の槍と殺意を抱く女子の誤解
「ちょっと
桜花はきょとんとした顔で、女子生徒の
とはいえ、桜花の
「お前、もしかして桜花と知り合いなのか?」
名前呼び。母の話によると、桜花は中学校にほとんど通っていなかったと聞いている。それでも下の名前で呼んでいるって、つまり桜花と彼女はどこかで知り合いなのではと。
「そういう
「いや、俺は……」
何様って別に
「もしかして……桜花のことを狙ってる? 高校入学
氷の槍のような視線が殺意を含んで飛んでくる。何も事情は知らないとは言え、怖い怖い。
「その前に少しは話を聞いてくれ。こいつは一応俺の妹だ」
「は? 貴方何言ってんの。だって桜花の兄さんはとうの昔に……」
「タイシくんはわたしのお兄ちゃんで合ってると思いますよ?」
おい桜花。救いの手を差し伸べてくれるのは助かるが、そこはどうして疑問形?
この女子は何かを言いかけた気もしたけど、妙な勘違いをされたまま話が進んでしまっても困る。とりあえず言い訳にもならない事実を先にこの女子に伝えておこうと思ったんだ。
「俺の母親が桜花を養子に迎えたんだよ。そんでこいつより俺の方が
「えっ…………まぁそういうこともあるかもしれないし、ないかもしれないわね」
どこかあっけらかんな顔が返ってくる。頼むから最初から素直に事実を認めてほしい。
どうにか誤解なく何とか事情を理解してもらえたらしいが、もしこの女子が桜花の中学の頃の知り合いだというのなら、俺と知り合っておくのも後々ややこしい事態にも対処できるかもしれない。こんな面倒な俺と桜花の複雑な関係は、二人だけの秘密としておく方がリスクありと思うわけだ。
てか、この女子。結局名前は何だったっけ?
「とりあえず話がまとまってよかったです。というわけでタイシくんはとっとと文芸部の荷物もまとめて、ここから出ていってください。廃部の書類をまとめたいので、今日中に片付けてほしいです!」
「待て待て。頼むから話の流れをもう一度最初から整理させてくれ!!」
で、桜花は桜花で、結局何しに来たんだ? 内容からして生徒会の仕事だというのはわかったが、まるで俺が
てゆか高校入学して仮入部期間も終わったばかりの部活が突然の廃部とかどういうことだ? んな話、先輩から一ミリも聞いてないんだけどな。
次の更新予定
2025年12月26日 07:00
物理文芸部の活動報告 鹿野月美 @shikanotsukimi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。物理文芸部の活動報告の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます