物理文芸部の活動報告
鹿野月美
Prologue
はじまりはいつも桜色で
窓が
放課後のこんな場所へ訪れるとは、一体どれだけ化学という授業が大好きな人間なのか。校舎の
やがて
隣の化学室は確か物理化学部が活動場所としていたはず。部活勧誘期間中の説明でそんな話を聞いた記憶があった。もっともどんな人がどれほどの規模で活動してるかなんて知る由もない。たとえ俺がすぐ隣の化学準備室で文芸部員を黙々と
あいつもしかして、物理化学部にでも入部するつもりなのか。生徒会の仕事だってあるだろうに。
あいつはいつも俺をそわそわさせてくる。つい一ヶ月前、初めて会った時からそうだった。
母親に言われるがままアパートの一室に足を踏み入れると、
「これから一生、わたしの傍にいてくれますよね」
その名の通り、桜色の花びらを身に
彼女の名前は
俺と同じ苗字なのは、養子として俺の家に迎え入れられたから。
いつも全てをほったらかしにして、俺の影の心を
少しは俺の緊張感というものを、あいつにも分けてやりたいと思うほどで。
一度遠ざかったはずの足音がこちらへ戻ってきたのは、数分と経たなかったと思う。
ただし今度はもう一人分の足音を引き連れていた。間もなく化学準備室のドアが開き、キラキラした桃色の声が小さな化学準備室の中で大きく反響したのだ。
「タイシくん。今日で文芸部は廃部になります。代わりに
「…………はい?」
ドアの向こう側には、俺の
ところで、何が
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