第5話 ライバルとの邂逅

ギルドでの任務をこなし、少しずつ注目され始めたランス。Eランクの少年ながらも、遺跡探索での戦術眼や仲間との連携で成果を挙げ、受付嬢や指導者たちの目にも留まっていた。しかし、ギルド内には同じ志を持つ若手冒険者も多く、その中で目立つ存在は必ずしも好意的に見られるわけではなかった。


ある日、ギルドの広間でランスは一人の青年冒険者と出会う。白銀の鎧を身に纏い、堂々とした立ち振る舞いのその青年は、ギルドの中でもCランクにしてトップ候補と噂される人物だった。名前はアルベルト。鋭い目で周囲を見渡し、誰もが一目置く存在感を放つ。


「お前が…ランスか?」

アルベルトの声は低く、落ち着いていたが、どこか挑戦的な響きがある。


ランスは少し身を引きながらも、しっかりと目を合わせた。

「はい、そうです」


アルベルトは軽く笑みを浮かべ、杖で掲示板を指す。

「今日のクエスト、俺たちは同じ任務に参加することになる。力試しとして、負けないようにな」


その瞬間、ランスは胸に熱いものが走った。初めて明確なライバルの存在を意識したのだ。アルベルトのような強者に勝てるはずもないが、だからこそ自分の力を試す意味がある。


クエストは近郊の洞窟内に潜む魔獣の討伐だった。入り口でランスは仲間と作戦を練る。

「敵の種類や数が分からない以上、先手を取ることが重要だ」

リーナの冷静な分析に従い、ランスは洞窟内での待ち伏せ地点や罠の設置を提案した。


洞窟に入ると、闇の中で魔獣が低いうなり声をあげる。ランスは慎重に足を進め、先ほど準備した罠で魔獣の進路を制御する。カイルとリーナも連携して攻撃を仕掛け、アルベルトチームとの距離を保つ。


戦闘中、アルベルトは圧倒的な力と技術で魔獣を圧倒する。しかしランスは焦らず、冷静に戦術を組み立てる。魔獣の攻撃パターンを観察し、仲間の位置と罠の効果を計算し、最も効率的に討伐できるルートを指示する。


結果、アルベルトチームよりも早く魔獣を倒すことに成功する。小さな勝利ではあるが、Eランクのランスにとっては大きな成果だった。アルベルトは驚いた表情を浮かべ、静かに頷く。


「悪くない…次はもっと手ごわくなるぞ」

その言葉に、ランスの胸は高鳴った。ライバルの存在が、自分をさらに高みへ押し上げる。勝つことよりも、強くなるための刺激。それがランスにとって新たなモチベーションとなった。


帰路、三人は互いに笑いながら歩く。森を抜ける風は冷たいが、心の中は温かかった。仲間と共に挑み、ライバルと競い、初めて「自分の成長」を実感した瞬間だった。


ギルドに戻ると、掲示板には次なる任務が掲示されていた。ランスはそれをじっと見つめ、決意を新たにする。

「俺は…もっと強くなる。仲間と共に、ライバルに負けない冒険者になる」


その夜、ランスは眠る前に日記を開いた。戦術の改善点、罠の設置場所、魔獣の動きの分析を細かく書き留める。これが、彼の戦術家としての成長の証であり、未来への道しるべとなるのだ。


ライバルとの出会いは、ランスにとって単なる競争相手ではなく、自分を試すための存在となった。力の差を痛感しながらも、知恵と努力で克服する喜びを学んだランスは、次なる試練へ向かう準備を着々と進めていた。

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