第6話 ギルドの試練と大規模戦闘
ギルドの広間は、いつになく緊張感に包まれていた。掲示板には「ギルド公式試練」と書かれた大きな紙が貼られ、各ランクの冒険者が集まっている。普段は自由にクエストを選ぶ冒険者たちも、今日は公式試練に挑むため、真剣な表情を浮かべていた。
ランスもまた、カイルとリーナと共に集まった。Eランクからここまで登ってきた自分たちが、どれほど通用するのかを確かめる絶好の機会だ。胸に期待と緊張が入り混じる。
「今回の試練は三段階構成。第1段階は個人戦、第2段階は小隊戦、第3段階は大型モンスター討伐だ」
ギルドの試練官が説明する。ランスの心は高鳴った。これまでの小規模戦闘とは比べ物にならない、大規模戦闘で自分の力を試すチャンスだ。
#### **第1段階:個人戦**
最初の試練は個人戦。ランスは小型のゴーレム型訓練モンスターと戦う。体格は大きく、攻撃力は高いが動きは鈍重。ここでランスは、これまで培った戦術眼と観察力を駆使する。
ゴーレムの攻撃パターンを分析し、地形を利用して間合いを取る。転倒や失敗もあったが、冷静に攻撃と防御を繰り返すことで勝利を収めた。戦闘中、ランスは自分の弱点を再確認する。力の不足は環境利用と仲間との連携でカバーできる、そう確信した瞬間だった。
#### **第2段階:小隊戦**
次は小隊戦。ランスはカイル、リーナと共にチームを組み、他の冒険者チームと対戦する。ここでは、個々の力だけでなく、連携と指示の的確さが求められる。
ランスは指揮を担当。敵の位置を把握し、罠や魔法、攻撃のタイミングを指示する。カイルが奇襲を仕掛け、リーナが後方から支援魔法を放つ。ランスは地形を利用して敵を誘導し、攻撃の隙を作る。
戦闘は激しく、仲間の一瞬のミスで危機も訪れる。しかし、ランスは焦らず、冷静に指示を出し続ける。結果、三人は見事に勝利。ギルドの観衆からも拍手が上がる。
「ランス…成長したな」
リーナが小さく微笑む。カイルも拳を握り、満足げに頷く。
#### **第3段階:大型モンスター討伐**
最終段階は、本物の大型モンスター討伐。広間から転送されたフィールドには、巨大なドラゴン型モンスターが待ち構えていた。体長十メートルを超える巨体は、圧倒的な存在感で立ちはだかる。
「ここからは、連携と戦術が命を左右する」
ランスは仲間に声を掛け、作戦を練る。洞察力と戦術眼を総動員し、モンスターの攻撃パターンを分析。罠の配置、地形の利用、魔法のタイミングすべてを計算する。
戦闘は熾烈を極める。ドラゴンは炎を吐き、尾で攻撃し、足で地面を叩く。ランスは仲間を守るため盾と槍を駆使し、的確な位置取りで反撃の機会を作る。カイルは素早い動きで攻撃を重ね、リーナは後方から支援魔法で援護する。
ランスは冷静さを失わず、攻撃の順番とタイミングを指示し続ける。ついに、仲間の連携と自身の戦術が一体となり、ドラゴンの胸部を貫く一撃が決まる。モンスターは倒れ、試練は成功した。
ギルドの観衆からは大きな歓声が上がる。Eランクだった少年が、仲間と共に大型モンスターを討伐したのだ。ランスの名はギルド内で一気に広まり、次なる任務への信頼を勝ち取った瞬間だった。
試練後、受付嬢が微笑みながら声をかける。
「ランスさん、あなたの成長は目を見張るものがあります。これからが楽しみね」
ランスは疲労で息を切らしながらも、仲間と肩を組んで微笑む。大規模戦闘を通じて、仲間との信頼と自身の戦術眼が確実に磨かれた。力だけでなく、知恵と判断力、そして連携こそが冒険者に必要な真の力であることを、ランスは肌で感じたのだった。
帰路、ギルドの広間を歩きながら、ランスは静かに誓う。
「俺は、ここで止まらない。もっと強くなる。仲間を守り、困っている人を助けられる冒険者になる」
その日、ギルドの空気には、Eランクの少年が一歩ずつ頂点に近づいていることを告げる静かな興奮が漂っていた。ランスは次なる試練に向け、心を固めたのだった。
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