第2話 基礎修行と仲間との出会い

ランスがEランクの冒険者として初めてのクエストを終えた翌日、冒険者ギルドの広間は活気に満ちていた。掲示板には大小さまざまな依頼が貼られ、冒険者たちが次々と目を光らせている。ランスも小さな報酬を手に、初めての経験を胸に刻みながら広間を歩いた。


「次は…もっと強くならなきゃ」

心の中でそうつぶやき、彼はギルド内の訓練施設へ向かった。ここは戦士、魔法使い、盗賊がそれぞれ専門の指導者のもとで技を磨く場所である。ランスは、自分にはまだまだ武器も戦術も足りないことを痛感していた。


訓練場に入ると、剣を握る中年の戦士が彼を迎えた。

「お前がランスか。Eランクだそうだな。では基礎から鍛えてやる」


最初の課題は「体力と反射神経の鍛錬」。丸太を飛び越え、盾を振り、槍で標的を突く一連の動作を繰り返す。ランスは何度も失敗し、息が切れる。汗が目に入り、肌が痛む。しかし戦士は厳しかった。


「甘えるな!冒険者は一瞬の判断で命を落とすこともあるんだぞ!」


怒声が飛ぶたび、ランスは体を震わせながらも必死に食らいついた。小さな体だが、負けず嫌いの精神だけは誰にも負けなかった。


次に魔法指導者の前に立った。ギルドに所属する魔法使いは、青年のような外見だが、目には深い知識と経験の輝きが宿っている。

「槍も悪くないが、戦いは力だけじゃ決まらない。魔法の理解も必要だ」


ランスは呪文書を開き、簡単な火球術の練習を始める。しかし手順が複雑で、何度も失敗。炎は小さな火花となり、時には自分の手を焦がす。焦りと痛みで涙が浮かぶが、青年魔法使いは冷静に助言を続ける。


「焦るな。魔法は心を落ち着け、敵の動きを読むための道具だ」


ランスは深呼吸し、再び火球を生み出す。小さくも真っすぐ飛んだ火球を見た瞬間、初めての達成感が胸に広がった。


そんな日々の訓練の中、ランスは同じEランクの仲間たちと出会う。まずは、陽気で力自慢の盗賊、カイル。彼はどんな困難でも笑顔を絶やさず、ランスを何度も励ました。

「お前、意外と根性あるじゃないか!」

カイルの言葉に、ランスは少し照れながらも、心の奥で安心感を覚える。


そして、冷静沈着で戦術に長けた魔法使い見習い、リーナ。彼女は戦略や罠の知識に精通しており、ランスがよくミスをするたびに、静かに指摘してくれる。

「焦ると視野が狭くなる。まず状況を把握しなさい」


ランスはリーナの指導を受けながら、自分の弱点が単なる体力不足だけでなく、判断力や観察力にもあることを理解した。


ある日、ギルドからの小規模クエストに仲間と挑むことになった。目標は近郊の森に出没する小型のゴブリン討伐。ランス、カイル、リーナの三人は初めて共同で作戦を立てる。


「ゴブリンは数で攻めてくる。正面からは危険だ。森の地形を使おう」

リーナの指示で、ランスは狭い通路に罠を仕掛け、カイルは敵を誘導する役割を担当。最初はうまくいかず、ゴブリンに背後を取られたり、罠が作動しなかったりで混乱が生じた。しかし、ランスは諦めず、仲間と声を掛け合い、次第に作戦が噛み合っていく。


戦いの終盤、ランスは危険な状況で咄嗟の判断を下す。森の倒木を利用してゴブリンの進行を遮り、仲間に反撃のチャンスを作ったのだ。その瞬間、三人の連携が完璧にかみ合い、最後のゴブリンを討伐することに成功する。


「すごい…ランスのおかげだ!」

カイルの歓声に、リーナも微笑む。ランスは恥ずかしさと達成感で顔を赤らめながらも、胸が熱くなるのを感じた。


その日、ギルドに戻ると、受付嬢は小さく微笑みながら言った。

「Eランクでも、努力次第でここまでできるのね」


ランスはその言葉を胸に刻み、仲間と共にギルドの階段を少しずつ上がっていく決意を新たにした。まだ道は長い。しかし、初めて信頼できる仲間と共に歩むことで、平民の少年の小さな冒険は、確かな一歩を踏み出したのだった。


森の中での小さな勝利、訓練場での汗と痛み、そして仲間との絆。すべてがランスを少しずつ成長させ、冒険者としての土台を築いていく。


彼の目には、次に待ち受ける試練への静かな決意が宿っていた。


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