第6話 長い聖夜
風呂から上がると、窓の外は本格的な雪になっていた。
時計は深夜を回り、街の音も遠くなっている。
「雪、すげえな。つーか、もう帰れないよな」
俺が言うと、晴香はパァっと顔を輝かせた。
「泊まってくか?」
「うん、泊まりたい!」
少し恥ずかしそうに、バッグをごそごそと漁る晴香。
取り出したのは、メイクポーチとレースがあしらわれた可愛い下着セットだった。
「あ、あのね……もし、万が一お泊まりになっても大丈夫なようにって、ちょっとだけ用意しておいたんだ」
「お前、俺が誘わなかったらどうするつもりだったんだよ」
「その時は、酔ったフリして、泊めてほしいってお願いするつもりで……」
堂々とした「計画犯」の告白に、俺は脱力し、それから笑いがこみ上げてきた。
完全に俺の負けだ。このすれ違いだらけの十年間を取り戻すには、一晩なんかじゃ到底足りない。
「そっか。じゃあ、せっかく替えの下着持って来たのに悪いけど」
俺は彼女の手首を掴んで引き寄せ、耳元で低く囁いた。
「え?」
「まだ履くなよ?」
「えっ、ちょっと…大輝……!」
晴香の顔が火照って真っ赤になる。
俺は軽々と抱き上げ、ベッドへ運んだ。
外は雪。長い長い聖夜は、まだ終わらない。
Fin…
ずっと、君を想ってた Sakuya. @sakuya_in_the_dark
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