第2話 見えないライバル
クリスマスイブ当日、待ち合わせの駅。
寒空の下で待っていると、人混みの中でも
「大輝! 待った?」
晴香だった。
雪のような純白のコートに、脚のラインをきれいに見せるロングブーツ。ハーフアップにした髪が、歩くたびに揺れる。
どう見ても――男を意識した装いだ。
それが俺のためじゃないと思うと、腹の奥がざわついた。
「お前、気合い入りすぎだろ。誰に見せるつもりだったんだよ」
「えっ? だ、大輝にだけど……」
「嘘つけ」
俺は不機嫌に吐き捨て、彼女の腕を引いた。
すれ違う男たちが晴香に向ける視線が、やけに鬱陶しい。
背中を隠すように、自分の方へ引き寄せる。
その拍子に、肩に掛けていた大きめのトートバッグが俺の体に当たった。
「……荷物、多くないか」
「そうかな? まあ、いろいろあるから」
曖昧に笑う。その言い方が、妙に引っかかる。
このあと誰かと別の予定があるのか……?
なんて、一瞬嫌な想像が頭をよぎったが、俺はそれを口にはしなかった。
晴香は、まだ俺に腕を引かれたままだ。
「つーか、お前、無防備すぎ」
「大輝、今日なんか怒ってる?」
「怒ってねーよ」
◇
レストランは案の定、カップルだらけの高層階の店だった。
「で? 正直に言えよ。本当は誰と来るつもりだったんだ?」
俺が低い声で尋ねると、晴香はワイングラスを持ったまま視線を逸らした。
「……だから、いないってば!」
「嘘つくな。一人でこんな店予約するわけないだろ」
「もう、いいじゃんその話! 今は大輝といるんだから!」
晴香はムッとしたように唇を尖らせる。
その態度は、図星を突かれたようにしか見えなかった。
俺は目の前のワインを一気に煽った。そうかよ、俺には言えないような相手ってことか?
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