「僕、ボク、ぼく」

M6363

まあるいなにか



「ねぇ僕はいったい何をしたいの?」


胸に大きな穴がぽっかり開いた


僕が首を傾げて僕達に語りかける。


「ボクは、みんなに認められたいんだ!」


「だからいっぱいがんばるの。」


眼をつむったボクが無理に笑いながら

そう話す。


「頑張って何が変わるのそんなに目立ちたい?」


「今だっていっぱい、いっぱいなのに馬鹿みたい!」


耳がないぼくは怒ってそう言う。


「じゃあ僕は、いつまでたっても気づかれないよ!」



胸に穴が開いた僕は、肩で呼吸をしながら

自分の思い通りにならないとふてくされる。


「それより今をしっかり生きないといけないよ。」


「明日もあるから休もうね。」


と眼をつむるボクがみんなをなだめようとする。


耳がないぼくは

「もう面倒だからいらないやつは消しちゃおう。」


そう言うと胸にぽっかり穴の開いた僕を消してしまう。


眼をつむるボクは


何が起きたのか良くみえない

けれど一人の僕が消えた事は

理解できた。


耳がないぼくは

「さからうと次はボクも消しちゃうからね。」

と今度は笑いながら話す。


ボクは逆らわないと伝えたのに


耳がないから聴こえなくて


「返事がないならみんな消しちゃうよ。」


というと胸にぽっかり穴の開いた僕と同じ様にボクを消してしまう。


「これでやっと静かになるよ…。」


そういうと耳のないぼくは

聴こえないのに他の僕達が

うるさくて消してしまっただけなのだ。


「ねぇやっぱり誰かいないの?」


「一人は寂しい…。」


「じゃあお前も消えろよ。」


顔がない誰かが耳のない僕に


伝えるが聴こえない。


そして耳ないぼくは顔のない

誰かに消されてしまう。


そう僕は誰もいなくなる。





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