第3話

 「何これ……めっちゃ面白いじゃん……」


 数時間前に遡る。

 書店に赴くと、『未来の旦那様』のコーナーができており、放送中のドラマのビジュアルと併せてPOPが展開してあった。

 こんなに話題なのか……と改めてその人気に驚きながら1冊手に取り、ドラマにハマって買ったクチの人だとは思われたくない……とひねくれた感情を抱えつつ、レジに持っていく。

 会計後、限定のコラボしおりまで付いてきた。ドラマを面白いと思えなかった自分の感覚がおかしいのかもしれないとさえ感じさせられる。

 帰宅してもあまり読む気にはなれなかったが、数日後に配信される4話を見る前に読んでおこうかと、重い腰を上げて読み始めたのが1時間前。

 そして冒頭の感想に至る。


「そうか……こうくるのか。意外と社会派だったんだな……。ドラマもこの後が面白くなってくる頃だ。今読んでおいてよかった」


 いざ読んでみると、自分と歳の近い主人公の恋愛をベースにしながら、不妊治療や高齢出産といった現代社会のリアルな悩みに真っ向から切り込んでいる内容だった。


「確かに自分も考えないとな……結婚がゴールではないし。子供が欲しいなら尚更……」


 仕事ばかりで真面目に考えられていなかったことに今さら焦りを覚えつつも、今からでも遅くはない、今日が人生で一番若い日だと、お気に入りの名言を口にしながらPCを立ち上げる。


「ヘイ、チャッピー」


 音声認識でもないAIチャットソフトに語りかけながら、質問内容をスピーディーに打ち込む。なるべく個人情報を包み隠そうと客観的に自分を見て、現状のスペックに少し虚しくなる。だが落ち込んでもいられない。

 ふむふむ。AIの返答を読み進めていたところ、とある情報が目に留まった。


「卵子凍結……」


 そうか。その手があったか。まさに目から鱗が落ちたようだ。

 今の年齢ならまだ成功率が比較的高いこと、将来の選択肢を残せるであること、と同時に、費用が高額であること、妊娠が保証されるわけではないことをAIから一度に知る。

 もちろん、情報を鵜呑みにしてはいけない。ネット検索も行ったところ、比較的近所のクリニックで卵子凍結を行えることが分かった。

 もちろん、答えは一つだ。


「……よし。やろう」


 たとえ予約が取りづらくても、仕事との調整が付けづらくても、多少費用が高額でも、構わない。可能性を残せるのであれば、それが一番いいのだから。


「今日が一番若い日!」


 再度口に出して、ウェブサイトから問い合わせを行う。

 しばらくして予約の完了を知らせるメールが届き、すでに一つの大きな山を超えたような気持ちがしながら、ソファに横になった。


 予約日まで、あと……。

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