第2話
「真鈴、お腹もう大丈夫なのー?」
次の日、学校の教室に入った瞬間、親友の
「うん。けど、今月はガチで最悪だった」
「えーエグイじゃーん。生理キャンセル界隈とかあればいいのにねー」
「なにそれ、お風呂じゃないんだから。陽菜は生理痛軽そうでいいよねー」
私達以外、誰も必要としない会話を繰り広げる。けれど、そんな何の生産性もない会話が私には心地良かった。陽菜は私と違って誰とでもすぐに仲良くなれる子だ。目鼻立ちもとても整っていて、誰が見てもうっとりとするはずだ。当たり前のように男子からも人気があるし、誰かへの不平不満や陰口も言わない。学校内でとても人気な女の子だ。けれど、今は芸能人に恋をしていて、彼氏を作らない宣言をしている。そんな一途な部分も可愛くて、まさに私の理想の女の子そのものだった。
「真鈴ほど酷くはないかなー」
「うらやまし」
私は積極的に友達を作るタイプではなかった。高二の春、新しいクラスになじめなかった私に、一番初めに話し掛けてくれたのがこの陽菜だった。私にとって陽菜は、すべてが理想そのものだった。彼女に近付きたかった。私もこんな風になれたら。少しでも陽菜のように輝ける存在になれたら。あのキラキラしていた万華鏡のように。
「ねぇ真鈴、昨日の拓海のあのドラマ見てくれた!?」
「あーお腹痛かったし、見てないや。後でネトフリでも見れるし」
「違うの! リアタイで見るからこそ、意味があるの! 生配信と一緒なわけ!」
「ドラマは生放送じゃないじゃん」
陽菜は自身の推しの話をする時、いつも目を輝かせている。その無邪気な姿がまた一段と容姿を際立たせていた。
「そうだよね……。けど、拓海のカッコ良さは見ないと分からないんだよ」
陽菜は今、
「見てよ、この尊さを!」
陽菜はスマートフォンをスカートのポケットから取り出した。そのままインスタグラムのアカウントを開き操作すると、得意気に私の目の前へかざした。須郷拓海が子役である五歳ぐらいの男の子を抱きかかえ、にっこりと微笑んでいるツーショットの写真だった。
「相変わらずイケメンだね」
陽菜は私の言葉に満足気に微笑むと、またすぐにスマートフォンを操作し、次の写真をまた私へ掲示した。
「てか、見てこれ! やばくない? この距離!」
「なにこれ。てか誰この人」
私はその写真を覗き込んだ。須郷拓海の公式アカウントの写真だった。拓海と密着するように、キュッと引き上げられている太めなアイラインがとても似合う女の子がいた。その大きな黒い瞳に宿る力と、口角をわずかに上げたその表情から、自信が満ち溢れている。目がとても大きく、他の顔のパーツも狂いなく堂々としていた。つややかな長い黒髪は緩やかに巻かれ、色気に溢れている。綺麗な人だ、と思った。
「この女の子、拓海の従妹なんだって。小さい頃から仲良しで芸術家らしくて、時々拓海のインスタに出てくるの。拓海といつも距離近くって!」
「人気俳優の拓海使って営業でもしてるってこと?」
写真に添えられた文章には、その人のアカウントも記載されていた。陽菜がそこをタップするとページが開いた。
「わ、この従妹、フォロワー三万人もいるじゃん! 絶対これ拓海効果だよね」
「けどねけどね、なんか拓海のほうが推してる感じなんだよー。尊敬してます、とかいつも言ってるしー」
泣きそうになっている陽菜を気にしつつ、私はその画面を見つめた。そのプロフィール欄にある文字を見つけた瞬間、私は「あ」と声を発していた。
「何? どうしたの?」
「……たぶん、小学校の時の同級生、だと思う」
「え、ウソ! ガチ!?」
陽菜が大声を上げた。そのプロフィールには『Arisa Kai』と書かれている。
やっぱりそうだ。万華鏡作りの時間に、私の隣にいたあの子。
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