第3話

幼い頃、よく遊んでいた公園に着いた。


懐かしみのある遊具を1つずつ見渡していけば、6つ並んだブランコ、その端っこが揺れている。





月子つきこ、」



後ろから控えめに声を掛ければ、揺れていたブランコが止まった。振り向いた幼馴染の瞳が、驚きで丸まっていく。けれどすぐに、いつものように戻った。


暗く悲しいもので染まった、苦しい瞳に、戻った。






「なんで、」


「家、居なかったから」


「今日は来ないと思ってたから……ごめんね。」




月子が、弱々しく微笑む。


見ていられなくて、隣のブランコに座った。揺らさないまま、前だけを見つめていく。





「何してるの」


「ブランコ」


「それは見れば分かる」


「デート、どうだった?楽しかった?」




さらり。訊かれた問いに、息が詰まった。


どうしようもない切なさに、覆われていく。




小さな深呼吸を繰り返すよう、口を閉ざす。


それでも、向き合って終わらせなければいけない関係に、腹をくくった。

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