第二話 こんなにも空が綺麗だなんて!
「んむぅ…わっ!今何時⁉︎」
慌てて時計を確認しようとするが、ここは地球ではないのだった。
だけどもぼーっとしている場合ではない。早くこの親のご飯や掃除をしないとまた殴られてしまう。
私は服を着替えようとしたが異変に気づいた。
あまりにも家の中が静かだった事だ。
いつもだったらこの時間、二人の喧嘩している声が聞こえてくる筈なのに。
リビングに向かう最中で匂いがした。鼻がツンとするような鉄の匂いだ。
もしかして…と思い急いでリビングに向かった。
そこにあったのは血溜まりだった。大量の血と腕、足が転がっていた。
「うっおぇー」
びちゃびちゃと吐瀉物が私の口から流れ落ちる。いくら最悪な親だったとしても人が死ぬのを見るのは初めての出来事だ。
「な、なんで死んでるの?」
恐らくモンスターがやってきて食われたのか…にしては抵抗した後がないようにも思える。それに何故私は襲われなかったのか?
この先どうやって生きよう。ここの世界についてまだわからない事だらけだ。ひとまず外に出てみないと。
私は血溜まりを避け玄関の外に飛び出した。
「うっ…眩しっ…わぁ綺麗」
久しぶりの外はあまりにも眩しかった。家は完全に閉まられており外が一切見れなかったのだ。
あまりにも綺麗で数秒間ぼーっとしてしまったが、まだ近くにモンスターがいるかもしれないと思い急いで離れることにした。
近くには私の家以外には何も無かった。
助けを求めようとしたけど他に家がないんなら仕方がない。
「ふぅ…子供の体力ってこんなにあったんだ。大人になると運動しなくなるからなぁ」
石を蹴りながら適当にほっつき歩いていたら目の前にスライムのようなものが現れた。
ザ•モンスターのような緑色でプルプルと震えていた。
「可愛い。少しだけ触ってみようかな」
ここは異世界なのだ、最弱のモンスター程度なら攻撃されても痛くも痒くもないだろう。
ツンツンと突いた瞬間突然動き出し瞬く間に私の首に絡みついた。
「かはっ!?あぐっ!」
首を絞められ息ができなかった。離せと液体状のジェルを殴るがブヨブヨしてたのか私の筋力がないのか全く効いていないようだった。
「はな…せ!!や…ら…」
意識が遠くなっていく。また死んでしまうのか嫌だ…せっかく転生してすぐ死んでしまうなんて。
「かはっ!はーはー…」
スライムが突然逃げ出してしまった。
何が何だかわからなかったが、そのおかげで私は息が吸えるようになった。
涙目になりながら遠く、遠くへと走って逃げた。
泉があったのでそこに座り込んだ。
「もう嫌…なんでこんなに痛い思いをしなきゃいけないの」
「そこのお方、何故泣いているのですか」
「誰⁉︎」
泉がぶくぶくと膨れ上がり、出てきたのは美しい女性だった。
どのぐらいの大きさだろうか、3メートルは超えている大きさをしていた。
優しそうだが私はもう信じない。どうせこいつも私を傷つけるんだ。
「大丈夫よ。この森で貴方を傷つけるものは誰もいないわ」
「嘘だ!嘘をつくな!そうやっていいように言って、私を襲うんだろ!」
目の前にいた女性は「あらあら」と言いながら空中に指で何かを書いていた。
「わわっ⁉︎」
突然体が浮き出し、何も抵抗ができないまま彼女の掌の上に落とされた。
「嫌!嫌だ!」
逃れるようにその場を走ろうと思ったが、腰が抜けて立ち上がれない。
大きな指がこちらに迫ってくる。
私は思わず目を瞑ってしまう。
(終わった…)
そう思っていたら。
頭が左右に動く。薄目でちらっと見たら女性は悲しそうな顔をしていた。
「大丈夫…もう大丈夫よ」
「な、何で貴方が泣いているの?」
「失礼だけど、貴方の記憶を覗かせてもらったわ…今まで一人で、心細く生きてきたのね」
頭がポカポカする。私は今、撫でられているのか?
私はそのまま地面に優しく降ろされた。
「えっと、あぅ…ごめんなさい。怖い人だと思って…」
「いいのよ。今までの事を思ったら当然だもの」
そう言いながら私の頭を指で優しく撫でる。
誰かに撫でられるなんて子供の頃以来だなぁ。
現時点で子供だけど…
少し遅れたが、私は名前を聞いた。
「私は植物の精霊王『ナルサテラ』」
「精霊…王?」
「そんなに硬くならなくてもいいわよ」
無理がある。精霊王といえば異世界ではメジャーな最上位の種族じゃないか!
私はこんな人を怖がって、頭を撫でられて、慰められて…なんて失礼な事を!
「えっと、ごめんない!…じゃなくて、すみゅませんでした!」
「あははは!」
精霊王は大笑いをしていた。
「ごめんなさい慌てる貴方が可愛くってつい」
☆★☆★☆★☆
「さて、貴方も落ち着いたところだし本題に入りましょうか」
精霊王は屈んで目線を同じにしてくれた。
「この世界に来てまだ日が浅いでしょ」
「は、はい」
記憶を覗いたときに私がこの世界の住民では無いことも分かったそうだ。
てことは中身が大人だっていうことも知っているということ…恥ずかしい。
「だからお勉強しましょ。貴方が知らない事、何でも答えてあげるわ」
「じゃあ一つ目の質問いいですか」
「なにかしら」
「ここは…何処なんですか」
「ここは、『ソウリン大陸』にある『泣く子の森』よ」
この世界には六つの大陸があるらしく
自然が豊かな『ソウリン大陸』
川が沢山あり漁業が盛んな『バシトロウ大陸』
乾燥地帯で年中カラカラな『サーハン大陸』
年中雪が降ってる『シャリン大陸』
火山活動が活発な『ボルガン大陸』
そして最後に、誰も寄りつかない危険な毒や生き物が生息している『立ち入り禁止区画』
主に五つの大陸が生活の手助けをしているらしい。
最後が気になったが、あまり言及しないようにしとこう。
「じゃあ次の質問…私の力ってわかりますか⁉︎」
実はこれが一番気になっていた事だ。
神様から貰ったはずの力が私にはあるはず。
「そうねぇ…少し頭触るわよ」
「んぇ」
精霊王は少し暗い顔をしながらこう告げた。
「残念だけどそういうものはなさそうねぇ…
あっ、一つ何かあるわよ」
「何ですか⁉︎何ですか⁉︎」
「えっと…うげっ…同情するわ。
「えっ…」
「何をするのにも失敗や不幸が起こる最悪のスキルよ」
だから転生してすぐに死にそうになったのか。
いったい私が、何をしたっていうんだ…私はただ、ゆっくり生きたいだけなのに。働いて走って殺されて、私は奴隷じゃ無いんだ!
「う、うぅ…」
ポロポロとまた涙が溢れてくる。子供の体だからなのか涙腺が脆い気がする。
「泣き虫さんね」
「ごめ、ごめんなさぃ」
精霊王はずっと私の頭を撫でてくれた。私が疲れて寝るまでずっと。
転生しても苦しいままなのは変わらない 紙ノ天気 @Sinnno_Tennki
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