第1話 出会い②

数分歩いてスーパーに到着。

カレーになるであろう具材達をカゴに入れレジに向かう。

大体2300円くらいか。

赤月家はルーを2種類混ぜるので

一気に買うとちょっと高くなりがちだ。



「へぇ、最近のスーパーはこんなもんも売ってんのか」



大人気クラン白銀の翼しろがねのつばさ

遂にカード化!!

今季の新人も収録!!

白銀の翼ホワイトチョコ税込550円

と書かれた、明らかにチョコはオマケの

商品を手に取ってみる。



白銀の翼といえば誰もが知ってるクランである。

メンバーの実力は勿論の事だが

ビジュアル偏差値が高すぎで男女共にファンが多く

現在、東京でNo.1クランとも名高い。



欠点という欠点もなく強いて言うなら

入団テストが厳しすぎてメンバーが少ないくらいか。



今季の新人ってことは〝あの厄介クソ女〟もカード化

されてるって事だよな。



俺たちの同級生で今季、白銀の翼に受かった

生徒がいて大層、世間から騒がれてたもんだ。



あの女は─────っと考えていると

ドンッという衝撃が体に走りに思考を止め

目線を向ける。


「きゃっ」


「おっとっと、大丈夫かい?」


目線を向けた先にはまだ幼稚園児くらいの少女。

恐らくはしゃいで走ってぶつかってしまったのだろう。


少女に手を伸ばすと彼女は手を取り立ち上がる。

するとすぐに


「お兄ちゃん、ごめんなさい」


「おっ、謝れてえらいなぁ。でも危ないから気をつけるんだよ」


「うん!またねお兄ちゃん!」


と言ってまた走って立ち去る少女。

おいおい、大丈夫か?と俺の心配をよそに

笑顔で走り去る彼女。

人にぶつからないようにな、と彼女を心の中で

心配しつつレジへ向かう。


「合計で2860円です」


「3000円からですね、140円のお返しです」



なんかちょっと高いなと思いながらも会計を済まし

ビニール袋に商品を詰める。


「なんだこれ、いつ入ったんだ.....?」

カゴの中にはカレーの材料のに混じり

白銀の翼のホワイトチョコが入っていた。



少女とぶつかった時にカゴに入ったのだろうか。

確かに棚に戻した記憶はない。


物凄く要らないし返品したいくらいなのだが

わざわざ言いに行くのも面倒だ。



せめてあの女だけは出るなよ、と願いながら

スーパーを後にした。



────────────


スーパーを出て、家までの帰り道。

ビニール袋が手にぶら下がっているだけで

肩が少し痛い。

「ま、こんなもんか」と独り言を呟きつつ、

淡々と歩く。



「誰か!誰か!助けて!!」



住宅街の角で、緊迫した声が響いた。

声のする方向へ駆け寄るとそこには

数人の男に囲まれ、怯えた表情の女性がいる。


俺は瞬時に状況を判断する。人数は不利。正面からまともに戦えば圧倒される。

――なら、気づかれていないアドバンテージを活かす。


幸いにも男共は女性に夢中で俺の事なんか眼中にないらしい。

小さく前にステップし、相手の死角に回り込む。

一瞬の間合いで肩口を弾き、相手は壁に背中をぶつけてひるむ。


「な、なんだお前……!」


残る二人が叫び、怒りで前に突っ込んでくる。

右手で一人の腕を払い、左肘で顔面を打つ。

体の勢いを利用して後ろに押し、さらに蹴りを入れる。

もう一人もバランスを崩して地面に倒れた。


気づけば、全員無事に倒していた。

女性は少し震えながらも、安堵の表情を浮かべる。


「あ、ありがとうございます!!ありがとうございます!!」


声に少し余裕はない。戦闘の緊張から解放されて、まずは素直に感謝の言葉が出たのだろう。

何度も下げていた頭を上げて

少し呼吸を整えると、彼女は続ける。


「……よかったら、お礼させてください!」


「いやいや、大丈夫ですよ! こちらも無事でしたし」

俺は少し照れくさそうに笑いながら答えた。


しかし、女性は強く首を縦に振り、目を輝かせる。


「是非、是非!お礼をさせてください!」


その真剣さに、俺は仕方なく小さく頷く。

どうしても断れそうになく、彼女の後ろについていくことにした。




────────

キャラ紹介


月島 結菜 つきしま ゆいな

26歳

身長162cm

栗色のロングヘア

瞳 茶色

色白

スラッとしているが華奢ではなく程よい大人の女性らしい体型。


同じ言葉を繰り返す癖がある。


基本的には落ち着いているが、頼りなさもあり

守ってあげたくなる系女子。


戦闘能力は無し。

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