第1話 出会い


枕元で聞き慣れた電子音が鳴り響いている。

寝ぼけながらも音の発生源に腕を伸ばし

静かになった所で夢を思い返す。



「……父さん、母さん」


それはとても暖かい夢。

もう触れることのできない愛。

後悔してもしきれない現実。



「そうだ、もう卒業したんだった」



平日はアラーム設定をしていて

設定を切るの忘れてたな……

せっかくのニート初日なのに

健康的な時間に起きてしまった。



今頃、みんな働いてんのかなぁ。



「まっ、人に向けて魔法が撃てない俺がクランに入っても意味ねーし仕方ないか」



東京魔法学院(正確には千葉にある)を卒業した俺は就職も決めずニートになる事に決めた。



「ハルトー!起きてるー?」


「おはよ、お義母さん丁度起きたとこだよ」


赤月 琴音

あかつきことね


ウェーブのかかった黒髪ボブで

とても40代とは思えないほどの美貌に

スラッとしつつも

出るとこは出たスタイルの美人

そして赤月家特有の真っ黒い目。



両親を亡くした俺を引き取ってくれた

俺の人生の恩人で父さんの妹だ。



「今日は何かするの?」


「いや、特にないけど」


「そう、良かったらこれ頼まれてくれない?」


「これは……」


渡された紙を手に取り目を向ける。




豚肉

人参

ジャガイモ

玉ねぎ

カレールウ甘口 中辛



「なんだ、晩飯の買い物かよ」


「ずーっと家に居ると体も鈍るでしょ

17時ぐらいには買ってきてくれたらいいから」


じゃ仕事いってきまーすと反論の余地も無いうちに

俺の部屋から出ていくお義母さん。

……ったく仕方ないな。


現在の時刻は9時23分。

17時までか……

幸いにもスーパーは歩いて5分の所にある。

30分もあれば充分だろうが個人的には

なるべく早く用事を済ませて

その後ダラダラしたい派だ。



早速準備してスーパーに行こう。

んで、溜まったアニメでも見るかなぁ。



そう決めた俺は早速、寝まぎから着替え家を出るのであった。



────────



今は4月、ようやく暖かくなってきた季節だ。

上下灰色スウェットで平日の朝に出かけるにしては

いかにもニートっぽい格好だが……

まぁスーパーに行くだけだ、気にしない事にする。



外に出てみると朝だからか、意外と肌寒い。

軽く腕をさすりながら歩く。


「こんな事ならもーちょっと寝てればよかったかな」


元々、東京5大家だった為か、

東京の中央区に居を構えていて

中央区を仕切ってたらしいが

父が無くなり、5大家を剥奪され

今や見る影もなく、ただのでかい家が

あるだけの赤月家となってしまった。



それ故に……



「流石、中央区。ちょっと出るだけで人多いな」



そう人が多いのである。

絶賛通勤ラッシュって感じか。

ゴミ出しをしながら家を出ている人や

子供を自転車に乗せ出勤している人もいたり

中には魔法を使って飛んでる人もちらほら。



それに……あれは新卒かな。

緊張や不安の中に何か期待や夢を膨らませて

まだ新しいスーツを着て歩く姿は

俺にはちょっと眩しすぎる。



「っとんな事考えても仕方ねぇ。

とっとスーパー行って帰ろ帰ろ」



自分に無いものを持っている彼等が

羨ましくて現実を見ないように

見なくていいようにそそくさと

スーパーへ足を運ぶのであった。



────────

キャラ紹介

赤月 陽翔 アカツキ ハルト


18歳 今年19歳の年

175cm

60kg

職業ニート初日

体は細めだが体術をする過程で意外と筋肉がある

所謂細マッチョ

顔 綺麗系イケメン

目つきが悪いのがコンプレックス

色白黒目

雷魔法

緩めのウェーブかかった黒髪で目にかかる長さ

本人曰く、短髪は似合わないそう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る