卵を割るな、腐らせるな
卵を割るな、という話をする上で、筆者のデビュー作の存在は避けては通れない。
全130話の長編ラブコメ作品、「サキュバスですが、大好きな幼馴染を奪われそうで泣きたい」である。
https://kakuyomu.jp/works/16818093089280130744
今でこそ★500という立派な人気作となった「サキュバス」であるが、カクヨムデビューし書き始めた卵の頃は、その10分の1にも満たない評価数だった。
当時の卵な筆者は、他の数多くの作家と同じく、評価に飢え、また同時に感想にも飢えていた。
承認欲求に憑りつかれたモンスターだった。
なので、自身の作品を読んでもらえるとあらば、飛びつくようにして様々な企画に参加した。
そんな中で、X(旧Twitter)上で「RTした人の作品を読む」云々というハッシュタグの企画がある。
その名の通り、ハッシュタグの付いたツイートをRTすることで相手が自分の作品を読んでくれるという、読書系のタグだ。
創作活動をしている人であれば、見かけた、そして実際に参加したことがあるという人は、それなりに多いのではなかろうか。
筆者は、そんなRT企画の内のひとつにエントリーした。
そして暫しの時間が経過した後、件の企画主からの「ご丁寧な感想」が返ってきたのである。
内容の子細は詳しくは覚えていない。
だが、一言だけ痛烈に覚えている。
「もっとお笑いを勉強するといいと思いました!」
こちらが下に出ている卵であることをいいことに、超絶マウント、上から目線のアドバイスである。
Xアカウントのフォロワー数も相手の方が大きく上回っていたということもあり、そこの部分でも舐めて掛かられたのかもしれない。
断っておくが、参加した企画には「作品を批評します・初心者向けに指導します」といった類の注意書きは一言もなかった。
自身の文章力に少なからず自負するものがあった筆者は、自由に書きたいという気持ちが大きく、またモチベーションを低下させるようなノイズを排したかったため、この手の批評系の企画は基本的に避けていたのである。
しかし、このように騙し討ちのような形で刺されてしまい、結果として筆者はプライドがひどく傷ついた。
筆者にとってこの言葉は、オブラートに包んだ上で「つまらない」と言われているのも同じであった。
多分相手は全く無自覚であり、意図せずマウントを取ってしまっているのだと思う。
だから余計にタチが悪いとも言える。
いずれにしても、この人物の行為は「卵を割る」、もしくは「腐らせる」行為だ。
アドバイスというのは、相手が乞うてからこそ初めて提供すべきものであり、必要としていない相手に押し付けるのは、ただの自己満足だ。
また、アドバイスというものは、相手に自身の事を信用してもらい、納得のいく説得力を持たせることで初めて成立する。
相応の肩書(デビュー作家であるとか、受賞経験があるとか、プロの編集者であるとか)があるのならまだしも、馬の骨が何を言ったところで説得力など微塵もないし、何よりも無責任だ。
言葉というものは、卵を割るのに十分な力を持っている。
才能ないよ、つまんないよ、もっと勉強した方がいいよ……いずれも卵の自信を喪失させ、創作へのモチベーションを大きく損なわせる「悪意」だ。
場合によってはそのまま筆を折ることにもつながりかねない。
もっと言えば、その後何年にもわたって創作活動ができなくなるような、甚大な
「いや、そんなつもりはなかったんです、この言葉で奮起してもらいたかったんです」は詭弁である。
相手がどう受け取るかを希望的観測を排して考え、傷つける可能性があるのなら黙るべきが「卵を脱した者のとるべき態度」である。
豚は
少なくとも筆者は単純なので、褒められると有頂天モードに突入し、非常にモチベーションが上がる。
また、「批評によってもっといい作品にしてあげたかったんです」と宣う輩もいるが、完全に「余計なお世話」である。
だから、お前は何様なのだ。
この一言に尽きる。
わかったら余計な手出しはするな。
必要かどうかは、卵自身が考える事である。
さて、先の言葉を受け取った場合、卵の頃の皆様ならどのような反応を取るだろうか。
先輩の言葉だからとありがたがって拝聴するだろうか。
言葉の真意を読み取って自信を喪失してしまうだろうか。
色々察して距離を取ろうとするだろうか。
筆者はトロールなのでブチ切れた。
鎌倉武士曰く、「武士の本懐とはナメられたら殺す!!」。
筆者の心に鎌倉武士の魂を宿しつつ相手のカクヨムプロフィールを調べれば、偉そうなことを
更に言えば、青く背伸びしたがりな若年層かと思えばそうでもない、自分よりも大分年上のおっさんだった。
こんな奴が偉そうに「アドバイス」?
実力カスやん。
こいつの言葉にいかほどの価値があると?
事実確認ができたところで、それらの証拠と共にレスバを仕掛けたところ、相手は顔を真っ赤にして罵倒してきたため、事態は泥沼化した。
結局、TLのフォロワーから苦言を呈されたことで自制心が働き、筆者は黙った。
頭の良い子は絶対真似しないこと。
それから一週間ほどで筆者の「サキュバス」は件の相手の最高評価数を抜き去り、さらに数日で★100を突破、更に評価は伸び続けた。
連載を終える頃には、もうちょっとで500に手が届きそうで届かないという微妙なラインでずっと足踏み状態だったのはご愛敬。
その後、色々頑張って実力と呼べそうなものを存分に発揮し、創作ライフを謳歌するわけだが、それは割愛する。
潰されかけた卵は、それを見事に跳ね除け一皮剥けたわけである。
一方、件の相手は鳴かず飛ばずのまま作品をエタらせ、いつの間にかログインしているような様子がなくなっていた。
卵の上に乗っかることで誰かよりも優れているという自尊心を保ち、何者かになったつもりになっていたのかもしれないが、結果的に何も成せない・残せない、「無」となったわけである。
卵を脱却したという自負のある諸兄には、どうかこの者のような卵を割りかねない行為は慎んで頂き、そして「無」とならないような良き創作ライフを過ごしていただきたいと願うばかりである。
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