ハジメテは剣士様と
朝、朝食を終えたフェルネスはサザンカに引き止められた。
「奥様。奥様はファンタジー小説が好きというのを伺いまして。これ買ってきたんです」
それはフェルネスが好きな小説家のファンタジー小説だった。
「あら、これまだ買ってなかったのよ。嬉しいわ。ありがとう」
その小説を抱きしめてダイニングを出た。
すると玄関に人影があった。
「グラジオラス様」
靴を履いていたグラジオラスは顔を上げた。
「フェルネスか。どうかしたか?」
「いえ。これからお仕事ですか」
「そうだが」
「成程。いってらっしゃいませ」
フェルネスは部屋に戻ろうとした。
「ファンタジーが好きなのか」
フェルネスは振り返った。
「そうですが」
「…そうか。いってくる」
グラジオラスは家を出ていった。
フェルネスは部屋に戻って、ベッドに寝転び、貰った本を開いた。
目が覚めた。
フェルネスは身体を起こした。時計は午後1時を指している。
(いつの間に寝てたのかしら。)
額を拭うと、手の甲に汗がついた。
(寝汗かしら…。)
フェルネスは下着とレース状の部屋着を持って部屋を出た。
bathと書かれた看板の部屋に入り、ドレスを脱いだ。
湯船に水を溜めるのが面倒くさいので、シャワーを一浴びする。
身体、頭、顔と洗い、風呂を出た。
キャミソールの下着を着て上からレース状のワンピースを被る。
また部屋に戻り、庭の窓を開けた。風が入ってくる。
ベッドに寝転がり、読みかけの本を開いた。ファンタジーの恋愛小説だ。
『―そして王子の呪いも解け、2人は結ばれたのでした―』
フェルネスは本を閉じ、時計を確認した。もう夕食時だ。レースのワンピースを脱ぎ、ドレスを着た。
ダイニングに行き、食事を取る。
「フェルネス、こっちの生活は慣れたか?」
「えぇ。でもやはり―」
「そうか。」
少し違うわね、と言おうとした所に、グラジオラスが被せてきた。
(なかなか切り出せないわね…。もう家まで来てしまってるから言い出しにくいのよね。しかも意外に悪くないし)
ステーキを口に運ぶ。
「フェルネス。後で渡したいものがある。部屋で待っていてくれ」
「はい」
まさか婚約指輪ではないだろうなと睨みながらも食器を重ねてダイニングを出た。
読み終わってしまったさっきの本を本棚に返し、また新しい本を出そうとする。
(…やっぱり少し暑いわね。ドレスは生地が厚いのよ。もう少し薄いのを買おうかしら)
ドレスを脱ぎ、面倒くさいので下着のまままた本棚の前に戻った。
(うーん。この前買った新作でもいいけど…。この前読んだ恋愛小説も読み返したいのよね)
うーんと悩んでいると、コンコンとドアがノックされる音がした。
(はっ!そうだった、グラジオラス様が来るんだったわ!)
「ちょっとお待ちくださいまし!」
急いでドレスを取りいこうとした時、フェルネスの声が聞こえていなかったのかと思いたくなるほどすんなりドアが開いた。
手に書物を抱えたグラジオラスはフェルネスの姿を見て目を見開いた。
「ちょ、ちょっと、お待ちくださいと言ったハズでは!?」
本を身近に置き、グラジオラスはフェルネスに近づくと両腕を片手で掴み、もう片手で顎をクイッと上げた。
「グラジオラス様っ…!?」
「なんだその格好は。まるで私を誘惑しているようだな」
「そ、そんなつもりは…」
ベッドに押し倒されると、フェルネスは唇を撫でられた。
「な、何を…!」
「かなり強気だな。」
口を塞がれた。勿論、グラジオラスの唇で。
「ど、どうしてこんなこと…」
「それはお前が好きだからだ」
グラジオラスの手はフェルネスの下半身に伸びていった。
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