Re:海辺の君と青に溶けるような恋をする

葉南子@アンソロ書籍発売中!

第一章 君のいる屋上まで

第0話 後悔してるんだよって言い逃したあの日


 潮の香りが風に混ざって届いた。

 秋の気配をまとった海風は、夏の出来事を連れ去るように通り過ぎていく。

 

 誰もいない屋上は、なによりも自由だと思った。

 手が届きそうなほど近くに感じる、海を反転させたような澄み切った空。

 世界中に私一人だけみたいだと錯覚するような開放感と孤独感。


 ──ねえ。あなたにこの声は、届いていますか?


 私の歌声は風と一緒に、波音の彼方へと溶け込んでいった。

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