第七話
まさか、俺たちがダンジョンに向かうことになるなんて。
最近、ダンジョンで異変が起きているらしく、調査してほしいという依頼だった。
――絶対、ろくなことが起きない。
ダンジョンの入口に立つと、禍々しい雰囲気が漂っていた。異変が起きているというのに、辺りは冒険者たちで賑わっている。情報が伝わっていないのか、それともただの強がりなのか。
そんなことはどうでもよくなるくらい、俺は体が震えていた。
けれどイエリスは、そんな俺には一切構わず、ダンジョンの奥へ入ってしまった。
「初対面の時より、なんで冷たく接するんだよ……」
仕方なく俺は後を追った。
――
このダンジョンは世界三大ダンジョンの一つで、未踏破の場所らしい。
普通のダンジョンは一階層しかないが、このダンジョンは五階層もあり、とても巨大だ。
一階層は迷いの森。
二階層は巨大な湖。
三階層は火の海。
四階層は謎の部屋。
五階層は、四階層の謎を解かないと入れない。謎を解いた者はいないという……。
一階層
森は雰囲気があるだけで、迷いの森とは到底思えなかった。不自然な事と言えばいくつかの木に数字が彫ってあること、木の位置が不自然だったことだ。数字は手前から3、1、2、1、3、4、3、5と掘られていた。規則性があるようで、今の俺には分からない。
期待外れだと思いながら歩いていると、突然オークが十体も現れた。
あまりの多さに、俺は腰を抜かしてしまう。
オークの斧が振り上げられ、死を覚悟して「リトライ!」と叫んだが、言い終わる前にオークは凍りついた。
「今は武器がないんだから、無茶するな。後ろにいて」
イエリスに怒られた。ショックだったが、何もしなくていいと思うと、逆にどうでもよくなった。
イエリスが口を開いた。
「いちいち、リトライと叫ばないと、巻き戻しできないの?」
俺はあれから心の中で唱え、巻き戻しの練習を密かに続けていた。
「もう少しで、掴めそうなんだけど……」
「じゃあ、実践してみる?」
イエリスが言い終わると同時に、タイミングを計ったかのようにオークが一体、姿を現した。
斧に当たりそうになってリトライと叫ぼうとすると絶対にイエリスが起こってきそうだ。何としても習得しないと。
どうすればいいのか必死で考えたが、避けるので精一杯だった。早くしないと体力が尽きて死んでしまう。そういえばいつだったかな?最初に発動したときに無意識に発動していたよな?もしかしたら.......
俺は声に出さずに巻き戻しをすることを深く考えすぎていたみたいだ。当たりそうになっては巻き戻し、攻撃をする。武器を手に入れるまでは相当時間かかるな。
二時間後
俺は倒したことを素直に喜びたいけど、イエリストの実力差が明白になり、悔しかった。しかもあくびして待ちくたびれてるみたいだし。
今まで巻き戻しを心のなかでするには、深く思い込むことが必要だと思っていたが、軽く思い込むだけで良かったみたいだ。
休憩を取った後、また歩き始めた。
あれから十分ぐらい歩いただろうか。そろそろ二階層に続く階段が見えてもいいのだけど。......などと思っていたとき眼の前に、氷漬けにされたオークが見えた。
これで五度目だ。
イエリスは何も言わない。
また同じ場所に戻されてしまった……
絶望勇者のリトライバトル〜五秒間だけ戻れる俺は追放された〜 @a_fay
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