行政代表Dが、時計を見た。

D: 「最終確認を。観測者が不足した場合、どうしますか」

主任研究員Aは答えなかった。

応用技術主任Bは答えなかった。

倫理顧問Cは答えなかった。

設計補佐Eが、震える声で言った。

E: 「市民生活行動モデルを——」

D: 「記録してください」

記録者の手が動いた。紙にペンを走らせる音が、やけに大きく響いた。

記録者: 「市民生活行動モデルを、観測補助要素として再評価する。暫定合意」

C: 「……暫定?」

D: 「はい。本格運用後、三ヶ月ごとに見直します」

C: 「見直すのは誰ですか」

D: 「我々です」

C: 「我々が、その時まで存在していれば」

誰も答えなかった。

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