【20:18】システムの矛盾について

設計補佐Eが、ついに立ち上がった。


E: 「確認ですが、無資格観測は犯罪である一方で、観測不足を補っている現実があります」


B: 「統計上はそうなります」


E: 「それはつまり……我々は犯罪を前提にシステムを設計しているということですか?」


A: 「前提にはしていません。ただ、発生確率として織り込んでいます」


C: 「それを知った上で制度化するのは、"意図的な事故"では?」


A: 「事故は意図できません」


C: 「では誘導は?」


A: 「誘導は設計です」


Cは静かに笑った。乾いた笑いだった。


C: 「言葉遊びですか」


A: 「いいえ。定義です」


C: 「定義が現実を作る?」


A: 「その通りです。それが観測理論の本質です」


E: 「では、観測者がさらに不足した場合、どうしますか?」

 

A: 「観測者を観測する上位層を増やします」

 

C: 「そしてその上位も不足したら?」

 

A: 「さらに上位を」

 

C: 「無限に?」

 

A: 「いいえ。最終的にはシステムが自己観測します」

 

E: 「……システムに意志があると?」

 

A: 「意志ではなく、設計です」

 

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