【19:31】市民の役割について
D: 「観測員の育成は時間がかかる。社会は待ってくれない」
行政代表Dは、テーブルを指で叩いた。
D: 「現在、未確定事象は一日あたり約八千件発生しています。確定させなければ、社会の安定度は著しく低下する」
C: 「だから市民を使う?」
D: 「"使う"という言い方は不適切です。彼らはただ生活しているだけです」
設計補佐Eが、小さな声で割り込んだ。
**E**: 「生活導線を、事故発生率の高い地点に近づけた場合も?」
D: 「偶然です」
A: 「偶然なら、倫理的問題は生じません」
C: 「……誰の倫理です?」
Aは答えなかった。代わりに、ホログラムに統計データを映し出した。赤い点が都市地図上に散らばっていた。未確定事象の発生予測地点だった。
A: 「これらの地点は、確率的に不安定です。誰かが観測しなければ、社会全体に波及する」
C: 「では、観測しない選択肢は?」
A: 「ありません」
C: 「なぜ?」
A: 「なぜなら、我々はすでにこのシステムを知ってしまったからです」
部屋がまた静まり返った。
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